思いがけない来客
午前中のラディアントカフェは、穏やかで心地よい空気に包まれていた。
リリィはいつものように優雅な所作で常連客をもてなし、
リカは軽やかな笑顔でテーブルを拭き、
ユイは力強くも丁寧にトレイを運び、
ミハルはレジ前で注文を整理していた。
奥のテーブルでは、ミツキがクレヨンで絵を描いていた。
時おり顔を上げて、母であるミハルをじっと見つめる。
そのとき、カランコロンとドアの鈴が鳴った。
イオキ・レイカが入ってきた。
黒いジャケットに、簡易的に包んだ金属バットを背負っている。
店内に広がるコーヒーの香りと甘いパンの匂いに、一瞬戸惑いながらも、
ミハルが手を振って迎えるのを見て、少しだけ表情をゆるめた。
「来てくれて嬉しいよ」
そう声をかけたミハルに、レイカは目をそらしてつぶやいた。
「…ただの、約束だから。腹も減ってたし。」
ユイが近くからレイカを見つめながら、興味深そうに言った。
「あなたが噂の“バットの子”ね。」
リカは遠慮なくジロジロと見てから、率直に言った。
「不良って言われてるけど…人を助けてるって話もある。」
その時、ミツキが椅子から飛び降りて、笑顔でレイカのもとへ走った。
「おねえちゃんっ! これ、描いたの!」
手には1枚の紙。
そこには、レイカがオリジナルのヒーロー衣装を着て、ブレイズフィスト、ストリームプリンセス、アンバーハートたちと並んでいる絵が描かれていた。
レイカは、ずっと張っていた硬い表情をほんの一瞬だけ崩し、優しく微笑んだ。
「…ありがとな、チビ。」
そのとき、リリィが現れた。
上品に淹れられた紅茶と、小さなケーキの皿を手に持って。
「ようこそ、ラディアントカフェへ。」
その穏やかな声には微かな警戒心も混じっていたが、
どこか優しさがにじんでいた。
「ごゆっくり。あなたは私たちの大切なお客様よ。」
レイカは少し躊躇いながらも、椅子に腰を下ろし、腕を組んで言った。
「…今日だけな。」
店内の空気が少しだけ変わった。
今ここに――
運命によって引き寄せられた少女たちが、初めて同じ空間に集った瞬間だった。
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