契約(けいやく)
保育園の前の路地で、ヒロトは立ち止まった。脳裏にはシェイドの声が響いていた。
—「俺の力で何ができるか、もう見たよな、ヒロト。さあ、次を試してみろ…」
ヒロトは、つい先ほど催眠をかけた先生のほうを見た。目が閃いた。
—「この先生を“おもちゃ”に変えてほしいのか?」
—「違う。俺がやる。命令するのはお前だ。」シェイドの声は冷たかった。
その瞬間、闇の影が先生の体を包み込んだ。数秒のうちに彼女の両腕は歯車や砲台に変形し、胴体は金属の鎧に覆われて膨らみ、天井を破って廊下一帯にまで巨大化した。メタリックな咆哮が、建物全体に響いた。
それは、巨大なメカニック・ドールの誕生だった。その赤い瞳は輝き、両手は武器そのものだった。
シェイドがヒロトの心に語りかける。
—「さあ、命令を出せ。」
ヒロトは冷酷な笑みを浮かべた。
—「あの園庭を破壊しろ…石ひとつ残すな。」
その命令が下されると、ロボット人形は機械仕掛けの腕を掲げ、遊んでいた子どもたちがいる園庭に狙いをつけた。そこに、ミツキ・タナカの姿もあった。
同じ瞬間、ラディアント・カフェでは、リリーがレジを確認していた。ユイとリカのブレスレットに鋭い警報音が鳴り響いた。まるで光の脈動とともに警告するような音だった。
—「…まさか!」リリーは顔をこわばらせて叫んだ。—「早く来て、裏の部屋へ!」
客がいないのを確認し、リリーは秘密の扉を開けた。そこはクリスタルが輝く小部屋で、奥には金色のルーンが刻まれたオーバル型の鏡があった。
—「これがオラクル・ミラーです。」リリーが説明した。—「最も差し迫った脅威を映し出すのです。」
鏡面が水のように揺らぎ、巨大ドールが保育園を破壊する映像が映し出された。最悪の瞬間、混乱の中、追い詰められた子どもたちの中に、ミツキも映っている。
ミハルは青ざめた。
—「いや…ミツキ!」
ユイは拳を握りしめた。
—「今すぐ行こう!」
リカは強く頷いた。
—「時間がない!」
ミハルは涙を浮かべながら一歩前へ。
—「私も一緒に行く。だって、あの子は私の娘!」
リリーは一瞬迷ったように彼女を見たが、すぐに真剣に頷いた。
—「いいわ。今日はあなたも連れて行く…私も行く。」
オラクル・ミラーが眩い光を放ち、一瞬で、全員が攻撃現場へ転送された。
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