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奇記怪快  作者: 瀬武瑠罵
1/1

鶴と鴉

時の流れは万物十色…

命の流れもそれにて早遅…

奇にて怪し…不可思議事、世に散乱す…。

終演渡し、始業となす…。


近くて遠い時代…

とある宿場町のとある長屋。

秋の夕暮れ時、透き通る赤茶の空気を切り裂く様な大きな音を立てて走る。

ザッッザッ!ザッザッッ!

勢いよく引き戸を開け男が軒先で大声を出す。

息も切れ切れ、目を見開き、

「うぉい!旦那っ!はぁはぁ。旦那は居るかいっ!」

薄く赤暗い部屋の隅には、一人の男が仰向けに寝そべっている。

「ちっ。るせぇ。ちっとは静かにできねぇのか。そんなに乱暴に開けたら戸がどっかに飛んでっちまうじゃねぇか。」

「っすっすまねぇ。はぁはぁ。来た、き…来た。今度は間違いねぇぜ!はぁはぁ。」

「あー…。まず、鼻の下の水。拭いたらどうだ?」

「その前に、旦那、水っ。水っ!」

男はお構いなしに、水瓶に頭を突っ込み勢いよく水を飲む。

鼻水垂らし、水瓶に頭を突っ込んでいるこの男、

名を「(カラス)」。小柄で短髪の小煩い男である。

「ったく…カラスの行水じゃねぇか…。で、今度はしっかりその汚ねぇ目で確認したんだろうな?まぁ、落ち着いて話せや鴉。」

「っおっ、すまねぇ。確かにこの目で確認したぜ!この汚ねぇ目で!って汚くねぇわっ!」

「すまんすまん。で、色と形は?」

「淡い山吹。少し靄がかかってやして…形までははっきりとは…」

「………、下の中ってとこか…。労働にもならねぇな…。そんなんで、わーわー言いながら来るんじゃねぇよ。テメェで解けるだろ。俺はまた寝るわ。後は任せた、鴉。」

そう言うと、つまらなそうに男は背を向け寝転んだ。

尻をボリボリ掻きむしるこの男、

名を「(ツル)」。ボサボサの長髪で痩せた長身の男である。

「だ…旦那ぁ…。あっ!そう言えば、美味い味噌田楽作ったけど、アレが居て怖くて鶴さんの所に持って行けないって…姉さんが言ってたっけなぁ。」

鴉は悪そうな顔をして鶴の耳元で話し始めた。

眉間に皺を寄せ、鶴は静かに耳を傾ける。

「…、そういや最近、身体が鈍ってて、ちょっと動かねぇとと思ってたところだったなぁ。散歩でもしてくるかな…。」

「おぉ、散歩ですかい?旦那。紅葉の綺麗なとこ知ってますんで、おいらが案内しますぜ。」

ニヤリとしながら鴉は鶴の草履を揃える。

鶴はゆっくりと立ち上がり、壁に立て掛けてある刀を取り、それを腰に刺した。

「さっさ、こちらですぜ旦那っ!」

鴉は腰を低くし、街の繁華街へ向かい歩き出した。

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