逃げ出したいオリエンテーション
「まずはエネンドがどんな世界か説明する。これを見ながら聞け。」
「みんなで知ろう楽しいエネンド、、?」
渡されたのはA4サイズの冊子で、表紙には"みんなで知ろう!楽しいエネンド!"とこれまたカラフルでポップに書かれている。
「これトリスお手製なんです。ふふふ、、、この強面がこれを、、、ふふふ、、、面白いでしょう?」
「俺は仕事をまっとうしているだけだ。」
また始まったやりとりを横目に冊子を開いて読んでみる。
「な、なんだこれ!」
目に入ってきたのは表紙からは考えられない恐ろしいモンスター、噴火するマグマなど禍々しい絵だった。
「エネンドは神が適当に生み出したモンスターや、危険な自然現象が多発する。お前達人間の仕事は不明な事があれば調査し、危険なものの排除をする事だ。」
「ただの人間がそんなことできるんですか!?」
「できる、というかやらなきゃ死ぬ。そもそもこのエネンドがどうやって造られたかは聞いたか?」
「はい、モノヘさんから最初に聞きました。神様が人間に怒って、、ですよね?」
「そうだ。初めは危険なモンスターも自然現象も発生してなかったんだが、、1つ神も予想していなかった事が起きてな。」
「え、、なんですか?予想してなかったことって」
「人間が死に怯えすぎてしぶとく生き残る事」
「そりゃ死ぬのこわいですし、、」
「神は新しいモノを簡単に生み出せるが故に生まれたものもまた簡単になくなると思っていたんだろう。」
「神様ってみんなそんな感じなんですか、、?なんか思ってたより残酷というか、、、」
「みんな?、、あぁ、お前たちの住んでた世界は神といわれるものが多かったな。」
「はい。本物かは流石にわからないですけど、寺とか神社とか多かったんで、、。」
改めて考えると神様と呼ばれるものは案外多い気がする。
それこそ神社や寺にいけば名前も知らない神様や祀られているナニカに手を合わせて、結局いつも同じ様な事をたった一枚の小銭と引き換えになんとなく願っていた。
あぁ、でもそう考えるとなんか、、
「神様ってストレス溜まりそうですね。」
「ストレス、、神が?」
「他人に勝手に期待されて勝手に失望されるのに神様がもらえるのって1つの願いにつき大体は小銭1枚だけじゃないですか。有名な所は1日に大勢おしかけるだろうし割にあってないなって思って、、。」
神様に同情してるつもりはないが、俺がその立場だったら絶対にしたくない。
そもそも神様なんて形の無いものを信じて何になる?派の人間なんだ俺は。
友達や女の子と一緒に行く時に流れとか雰囲気で参拝してるだけで普段は神様の事なんて微塵も考えない。
「まぁ、どう思うかはお前の自由だが話を戻すぞ。エネンドの神は予想以上に減らない人間を見て過酷な環境下に変化させたら流石に人間も死ぬだろうと思いつき、今のエネンドになったわけだ。」
「神様ってそんなに人間に死んでほしいんですか、、しかも一気に現実から人間が消えたら大騒ぎになりません?」
「詳しくは話せないがエネンドに来た人間の事現実にいる奴らの記憶から一旦消える。消えた人間のことを誰も覚えてないし思い出さん。」
「じゃあ俺いないことになってるんですか!?女の子の記憶からも!?嘘だろ、、、」
「騒ぐな殺すぞ」
「すみません、、、」
俺の人生を彩るといっても過言ではない女の子達の記憶からも消えてるなんて、、あぁ、、ショックだ、、。
「エネンドにも女性は沢山いらっしゃいますよ。もしかしたらお気に召す方が見つかるかもしれません。白川さんは好みの方を自分に惹きつけるのがお得意の様ですから。」
「まぁ、、否定はしませんけどぉ、、、」
俺みたいな感じで他の人間もエネンドに来てるならそりゃいるか。ポジディブに考えよう。案外よりどりみどりかもしれないし。
「お前の女関係などどうでもいい。次は職業についてだが、、」
「あぁ〜、、詐欺師ですもんね俺、、」
「お前が思ってる詐欺師とは違うぞ。」
「え?」
「いいか?ここが異世界ってことを忘れるな。」
「は、はい!」
「エネンドでは職業に関連した能力で仕事をしてもらう。お前の能力は他の能力を奪う事だ。」