転職は無理でしょうか
「詐欺師ってあの犯罪の!?」
「その詐欺師〜」
詐欺師なんてありえないだろ、、
確かに女の子にちょーっと良い顔して落とす過程を楽しんだり、上司に媚び売って仕事やってもらったりはしたけどそんな事で詐欺師までなるか?いやいやそんな、、
「それがなるんだよ〜残念だったね〜」
「えっ、、まさか、、」
「もちろん、ジビスも心が読めますので。」
「そんな素ぶり全くなかったのに、、、」
「人間ってず〜っとなんかいってるから気持ち悪いしぼくはモノヘほど人間に興味な〜い」
「人間ほど面白い生き物はいないですからね。白川さん、次はオリエンテーションです。移動しますよ。」
「オリエンテーションまであるんだ、、」
すでに最初より驚かなくなった自分の適応能力を褒めてあげたい。
しかしここまでくると普通に入社した感覚に、、はならないか、、。あ、移動する前に1つ聞かなきゃいけない事がある。
「あの、ジビスさん。1つ聞いてもいいですか?」
「なに〜?」
「あの、、この世界って転職という概念は、、?」
「あは〜!な〜〜い!」
「そうですよねえ、、、」
今日1番の笑顔を見た気がするが俺の儚い望みは消えた、、。詐欺師変えられないのか、、。
「まぁ〜死なないようにがんばってね〜」
物騒な言葉に送られ建物内を移動していると、黒いドアの前でモノヘが足を止める。
「ここがオリエンテーションの部屋になります。」
「は、はい」
入らないのだろうかと不思議に思っているとモノヘがくるっと体の向きを変えて俺と対面になる。
「先ほどジビスについて秘密にしていたお詫びにこの部屋に入る際の注意点を1つ教えて差し上げましょうか?」
「え!いいんですか、、?」
「そう怪しまないでください。騙そうとしてるわけではありませんよ。」
「じゃあお願いします、、」
「この部屋に入るとまず何かしらの凶器が飛んできます。あたりどころが悪いと死にますので、生きていたければ回避するなり致命傷を避けるなりしてください。」
「凶器!?え!?そんなこといきなり言われても、、!」
「それでは行ってらっしゃい。」
まだ心の準備もできてない、できるわけないのにモノヘに腕を掴まれて部屋へ投げ入れられる。
その瞬間何かが自分に目掛けて飛んでくるのが見え、とっさにしゃがんだもののバランスを崩して転げた。
「遅い。予定より3分29秒もオーバーしているぞ人間。」
ぎゅっと閉じた目を開くと視線の先にはモノヘやジビスと同じような制服を着た男がこちらを睨んでいた。
慌てて体を起こすとドアには大きめのナイフが刺さっていてこれがもし自分に、、、と思うとゾッとする。
「おや、白川さん無事でしたか。」
その後なんて事ないみたいな顔してモノヘが部屋に入っきた。肩で息をする俺を見て"運が良かったですね"なんて面白そうにいうこの男は悪魔なんだと思う。
「おいモノヘ。予定時間を過ぎるなと毎回言っているだろう。」
「いいじゃないですかあなた暇そうですし。」
「俺は暇ではない。なぜお前はいつも時間を守れないんだ?昨日だって、、、」
「わかりましたわかりました。それなら遅れた分巻きでオリエンテーションを終わらせましょう。」
「そのオリエンテーションも俺がやるんだが。」
「あなたが担当なんですから当然でしょう?さぁ、白川さんこちらへどうぞ。」
「あ、は、はい」
俺は命の危機を回避したばかりというのに何を見せられているんだろうか。
よく見るとこの部屋はそんなに広くなく黒いソファが並べられて、奥には本や書類が積まれた机がある。
なんか既視感があるな、、、、あ、あれだ!
「校長室みたい、、」
「校長室、、ふふっ、、ふふふふ」
「何を言っているんだお前。」
「あなたのセンス校長先生と同じって事ですかね。ふふふふふ、、、」
「笑いすぎだぞ。何がそんなにおかしいんだ?」
何が面白いのか俺にもわからないがとりあえず席に着こう。
改めて見ると目の前に座るこの男は背筋がシャキッとしていて、鍛えているのか体に厚みがある。見た目だけでいうとモノヘより年上そうだ。胸元には髪の毛と同じ赤色の花のブローチがついている。
「こちらはトリス。オリエンテーション担当で、見ての通り時間にものすごくうるさい男です。約束の時間を破ると先程と同じ様に殺そうとしてくるので頑張って避けてください。」
「時間を守らない奴が死んだって誰も困らないだろう。時間すら守らない奴はなんの役にも立たん。」
「それで殺されそうになったのか俺、、」
「そしてこちらが白川碧さんです。」
「ジビスから情報がきていたから知っている。」
「白川です、よろしくお願いします。」
「しかし見れば見るほど詐欺師に向いてるようには見えないな。」
「それもう知ってるんですね、、」
「当然だ。ここにも書いてあるしな。」
トリスの手にはいつのまにかジビスが持っていた本があった。
「えっ、いつの間にジビスさん来たんですか?」
「ジビスは来ていない。この本はいわば複製みたいなもので本物はジビスが持っているし、ジビス以外は開けない。俺が持っているこれも用が終わったら自然に消える仕組みになっている。」
「そんなことできるんですか、、すご、、」
随分とファンタジーちっくな仕組みだが、ひとまず俺の情報が無闇に晒されることはないと知って安堵する。
あんな何が書いてあるかわからないもの誰の目にも触れられたくないのが本音だ。
「無駄話はここまでだ。これよりオリエンテーションを始める。」
グロリオサ