1等の景品は地獄へのチケット
「おめでとうございまーす!1等は異世界へのチケットです!」
ああ、、あの時綺麗なお姉さんに釣られて怪しいくじ引きなんて引かなきゃよかった、、、
そうしたら今頃女の子と楽しい飲み会だったのに、、
「いいじゃないですか異世界。結構楽しいですよ?」
この男はモノヘ。
くじ引きで1等を当てた後この部屋で目が覚め、コイツが立っていた。全身黒の服に身を包んで、一見執事のようにも見えるが胸元に光る白い花のブローチがやけに眩しい。真っ白な肌、更には吸い込まれそうな黒い瞳がおぞましくて目を見れない。
しかもさっきから考えてる事を読まれまくっていて非常に困る。
「さあ、そろそろ後悔の時間も終わりです。白川碧さん。」
「俺の名前まで知ってるんですか、、?」
「えぇ、もちろん。この世界に来た方の事はなんでも知っています。」
なんでも、ね。と。
不気味に笑うモノヘに鳥肌が立つ。
冷や汗が背中を流れるのを感じながら本能が"この男に逆らうな"と注意信号を出してくる。
「白川さんはとても利口ですね。最近は騒ぐ方が多くて多くて、、」
俺だって騒いでいいなら今すぐにでも叫びたい。
でもそれをしたらいけないと体が訴えるように喉がキュッと締まる。
「ちなみに騒いだ場合って、、?」
「それは、、、」
モノヘがスタスタとこちらへ歩き、床に座っている俺にギリギリまで顔を近づけてニンマリと笑う。
「死にます。今すぐに。」
ヒュっと息を呑む音がやけに大きく鼓膜に響く。
冷や汗が滝のように噴き出して、頭は真っ白になり、昨日短く切ったはずの爪が手のひらに食い込んで痛い。
「そんなに恐がらないでください。今は殺しませんよ。」
まるで面白いものを見たかのようにくすくす笑いながら離れた距離に安堵は出来ない。
心臓はまだ大きく脈打って全身が震える。
今は、殺さない。裏を返せば何かあれば殺すと言う事だ。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら震えを抑え込む。
「この世界はエネンド。簡単にいえば神様が作り出した異世界です。」
「神様ってあの神様ですか、?」
「その神様です。」
神様が作り出したなんて尚更理解できない。
そもそも神様が実在するのか?レベルの認識。
「人間って神様を都合のいいものとして扱うんです。悪い事が起きたら運が悪かった、神は不公平、とか言うじゃないですか。それなのに良い事があれば自分の手柄と言わんばかり、、、なので神様は怒り、エネンドを作り出しました。」
「は、はぁ、、。」
「そして、エネンドへ来た人間がする事はただ一つ。労働です。」
「労働、、仕事ですか、、!?」
「拒否権はありませんし、拒否したら死にます。」
ここまでで1つ確実にわかった。
この世界は何をするにも死が付きまとってるらしい。
この労働だって要は"やらなきゃ死ぬ強制労働"って事だ。
拒否なんてできる訳ない。したらすぐ殺される。
「職業が何になるかは適性検査をしないとわかりません。白川さんが何になるのか楽しみですね。」
スノードロップ