第0話 大切な何かを失った日
――〇〇〇視点――
小さいころから、いろいろなものに夢中になっていた。
体全部を使って自然を体験していた。
「虫さん捕まえた!」
「みてみて、おっきな雪だるま!」
いっぱい遊んで、いっぱい食べて、いっぱい寝た。
小学生になったころ、お父さんと同じように剣道を始めた。
お父さんのようにかっこよくなりたかったから、それに―――を守るヒーローになりたかったから。
「第60回〇〇大会小学生の部優勝、〇〇〇くん、おめでとう」
「ありがとうございます」
市内にあるクラブの大会や全国大会でも優勝した。
そのたびに、お父さんとお母さんは褒めて、喜んでくれた。それに、—――も「すごい!」と褒めてくれた。
嬉しいと思った。もっと頑張ろうと思った。
けど
長くは続かなかった。
――〇〇〇視点――
私は、お母さんが好きだった。
よく、公園で遊んでもらっていた。
「わたしもおてつだいする!」
「ありがとう。じゃあ、このキャベツの葉っぱをちぎってくれる」
「うん!」
一緒に料理をした。
「こうして、女の子は幸せに暮らしたのでした。めでたし、めでたし」
「すや~~~」
寝るときは、絵本を読んでもらっていた。
そんなある日、お母さんが亡くなった。
原因は、働きすぎによる過労死らしい。
お父さんが亡くなってから私を育てるために頑張っていたのだ。
私は、祖父母に引き取られ生活した。
小学校のころに遊んでいた友達も、ある日を境にいなくなっていった。
その日以降、私は、一人になった