己の立場
あらすじが完成しました!
「ぼく、すみれさんにまだ言ってなかったことがあるんです……」
「言ってなかったこと?」
「ちょっと、来てもらってもいいですか?」
「………」
ハクは奥のベンチに向かって足を前へと進みだした。
♢♢
「あの……」
自分たちと同じ制服を着た男二人に、ハクは声をかける。
「………?」男らは、目を丸くしながら怪訝な目をしてハクを見つめた。「おまえ、あのときの……」
「覚えてますか? あの時した約束」
「……あぁ」男の一人は言った。
「その――」
自分の背中の先にいたすみれの姿が映るように、ハクは横にずれ振り返った。
「楽器が弾ける人……連れてきました」
「………」
目線を横に移すと同時に、二人は瞼を大きく見開く。
驚いたのは彼らだけではなく、隣にいるすみれもであった。
「どういうこと……? ハク」
すみれは早急に説明を求めた。
「ぼく、この人たちと楽器が弾ける人を連れてくることを条件にバンドを組む約束をしてたんです。……すいません、今まで黙ってて……」
「……そう、だったんだ」
すみれは腰かける二人の男に目を向けた。発言をしようとした自分より先に、向こうの方が口を開く。
「で、おまえは何弾くんだよ、楽器は」男はすみれを見てそう尋ねた。
「吹奏楽部で、ピアノを弾いてた」
「ピアノ? ……いやその前におまえ吹奏楽部って……部活入ってるやつ連れてきてどうすんだよ」
男の視線がハクへと向かう。
「いや、この人は――」
「部活はもう辞めた」
ハクが説明をしようとした矢先に、すみれがそれを遮るようにそう告げた。
「………」
再度、視線がハクに注がれる。
男は少し間を空けた後再び口を開いた。
「あぁわかったよ。おまえはちゃんと楽器が弾けるやつを連れてきたから、約束は守ってやるよ」
「………!」思わずハクは目を見開いた。
うれしくてうれしくて……。
これから何もかも思い通りに進むんじゃないかと、そんな幻想を抱いてしまうほどに。
「これからこの四人で学校に部の申請をする。その代わり」男は続けて言った。「リーダーはおまえがやれ」
その言葉を聞いた瞬間、思わず絶句した。
「え………」
(……りー、だー?)
リーダーという言葉が自分に似つかないものであるかなんて、身に染みて理解している。
楽器が弾けない。
そもそも、音楽というものを本格的にやってきた経験すらない。
そんな人間に、バンドのリーダーが務まるというのか。
自分にリーダーを指名してきたこの男は、一体何を考えているのか。
「だっておまえ、何もないだろ。楽器弾けないんだろ? 歌も自信ないんだろ? だったら、リーダー以外おまえができることないだろ?」
「ちょっと待ってください」ハクは言った。「あの、リーダーって何ですか? 何やるんですか?」
――慌てるな。感情的になる前にまず冷静になるんだ。
「それはあれだよ。部長として書類提出したり、活動報告とか、あとは……イベントとか参加するために生徒会に駆け寄ったり……たくさんあるだろ? おまえの仕事」
(なんで……? ……そんな、音楽やるはずじゃ……)
思わずこぶしを握り締めていた。
何かが間違っている。
きっと何かの勘違いなんだ。
じゃないと……。
こんな理不尽なことへの説明がつかない。
「……できるんですよね? 音楽……ぼくもバンドのメンバーなんですよね?」
「あぁおまえはバンドのメンバーだ。でも音楽するっておまえ何やるんだよ。ないからご丁寧に仕事渡してやったんだよ。要はあれだ。おまえはマネージャーみたいな――」
〈………おれが、マネージャー?
音楽は?
メンバーなのに音楽ができない?
なんで……なんで……!
――だっておまえ、何もないだろ
その通りだ……。おれは何もないんだ。何もできない。
あの人たちが悪いんじゃない。おれが何もできないから……こうなるのは当然のことで……。
全部最初っから……。
都合がよすぎるなって思った。
なんか上手くいきすぎてるって。
おれが全部都合のいいように思い込んで……
すべてが自分の幻想で……
ただおれが都合の悪い現実を見なかった結果、こうなった。
――ああ。なんて様。
音楽やろうなんて……思わなければよかった〉
「ちょっと、いい?」
突然、すみれが口を開いた。




