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第58.5話 お嬢さまに変化(2)

(侍女視点)



嘗てのお嬢様はガンマ殿下に対して強すぎる恋愛感情を抱いていた。それ故に過剰な行動と少しでも好かれるための努力をなさっておられたのだ。王太子妃にふさわしくなるべく勉学に励み、殿下よりも成績が上になり、殿下の好きな食べ物を中心にした料理を作れるように……それは壊滅的だったな。そして殿下の好きそうな色のドレスばかり選んで……似合っていなかったけど。



あ、確かに『今の』お嬢様の評価は間違っていない。あの頃のお嬢様は空回りする行動が多かったことだけは否定できない。しかし、お嬢様が美しいのは今も昔も変わらない事実なのだ。それなのに、お嬢様自身の自己評価が低すぎるのは見てきた私としてもいい気はしない。



「お嬢様は見た目と中身も魅力的です。確かに以前のお嬢様は行動力が行き過ぎており、また感情的すぎるところがありました」


「あ~……やっぱりそうよね……」


「ですが、言い換えるならば純真で真っ直ぐな証拠とも言えます。それに比べればガンマ殿下はお嬢様に向き合おうとしなかったのです。ガンマ殿下との関係は最悪なものとなりましたが、それでお嬢様が自己評価を低く考えることはありません。そもそも、今のお嬢様は自身の過度な行動を反省して変わられたではありませんか。もっと自信を持ってもいいはずだと私は思います」


「…………」



あまりにも自己評価が低いままだと将来が心配になる。せっかくオルフェ殿のような良さそうな幼馴染の青年が近くにいるのに、婚約に後ろ向きなままなのは不味い。公爵家の為というのもあるけど、それ以上にお嬢様のためにならないのだ。



「自信を持つか……それも一つの手ね。学園に復帰した時のことを考えると結構目立つわよね……」


「はい。お嬢様は美しいですからね」


「私の見た目の変化はあまりにも大きい……好き好んで近寄るのは何かしらの思惑がある者か物好きな者だけ……利口な者なら静観して近寄らないか。それならいっそ堂々と自信をもった令嬢として振る舞うというのも……」



そう簡単に私の思いが伝わることはなかった。何だかお嬢様の中で話が変わってきている。いつの間に学園に復帰した時の行動という話に?



「お、お嬢様、私は本心からお嬢さまに自信をもってほしいのです! ですから……」


「あ、分かっているわ。婚約がどうとかは卒業した後にでも考えるから安心して」


「……っ!」



あんなにこだわっていた婚約を卒業した後に? ……お嬢様は本当に変わられた。いかに失恋……色恋沙汰から思考が離れたからといって、ここまで変わるもの? 



私は心配でならない。これはもう、私や『陰』も独自に動くべきかもしれない。ゴウルにもっと早く情報を仕入れてくるように仕向ければよかったかも。お嬢様の信頼を得るための試験みたいなことなど考えなければよかった。


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