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第57話 元側近の手紙

ミロアが目覚めてから十八日目、彼女の元に手紙が届いた。だが、それは幼馴染みのオルフェのものではない。とても意外な人物からのものだった。



「………何でこんな方から手紙が届くのよ?」


「どういう方なのですか?」


「全くの他人よ。ガンマ殿下の元側近なんて……」


「え?」



手紙の差出人に名前を知って戸惑うミロア。それもそのはず、差出人の名前には『ローイ・ミュド』と記されてあるのだから首をかしげるしかない。手紙をもらう理由が思い当たらないのだから困惑中だ。



「……本当に一体どういうこと? 何であの王子の側近を辞めた男から手紙が届くのよ?」


「侯爵令息の方ですか。オルフェ様とは違う……」



ミロアとローイ・ミュドとの間にはほとんど接点はない。彼が側近を辞める際に去り際に忠告を受けたことくらいしか覚えがないのだ。そんな男からの手紙が来てもミロアは不気味にしか思えない。



(ローイ・ミュドのことは正直良く分からない。殿下の側近を辞めるような男だからまともな人だとは思うけど、私に手紙を出す理由がよく分からないわ。……もしかしてオルフェがいち早く彼と結託した? でもそれならオルフェの方から手紙でそう伝えてきてもいいはず……だとすると、なにか思惑があるの?)



思惑と思いつくと警戒心を強めざるを得ない。貴族の身分の者に思惑を持って手紙を出すことは大抵が利己的なものばかりなのだ。例えば金銭等の貸し借りや婚姻目的、仕事の話など様々だ。そういうことは前世の知識以前よりも貴族の教育で知っている。



(こっちは公爵家で向こうは侯爵家……目的があるとすれば貴族らしい要求を求めているのかしら? 流石に婚姻とかはやめてほしいわね。当分は婚姻絡みは御免こうむりたいし……)



「はぁ、もう開けて見てから考えるしかないわね」


「お嬢さま、開けるかどうか迷うのに時間がかかり過ぎでは?」


「色々考えてたからよ。不測の事態なんだし……」



約一時間かけて手紙を眺めながら考えた末に、結局手紙の内容を隅々まで把握してから考え直そうということにしたミロア。隣でエイルが呆れていることも理解しているが、それはもう仕方がないことだろうと割り切ることにした。



(私には前世の記憶があるから『日本』の小説の知識のせいでこんなことに深く考え込んじゃうのよね。でもそんなことを誰かに言うわけにはいかないし言いたくもない。間違いなく頭がおかしくなったと言われるか、信じられたら複雑に感じて距離を置かれる可能性が高い。転生主人公はほとんど『僕・私は前世の知識がある』なんて言わないのが多かったしね。私もそこは空気を読まなきゃ)




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