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第7話 いい父親

親子して泣き止んだ後、父の書斎でミロアはすぐに本題に入った。



「何だって? ガンマ殿下との婚約を解消したいだって?」


「はい。私にはもうあの御方を愛するなど到底できません。向こうも同じことを思っているはずですから」


「……殿下と何かあったのか? 3日前にお前が急遽屋敷に戻ったかと思えば窓から落ちたと聞かされたんだぞ?」


「3日も私は寝込んでいたんですか? それでガンマ殿下はなんと?」


「何も知らんとしか答えてくださらなかったが、実際はどうなんだ?」



ミロアは、ガンマに対する気持ちが冷めるのを通り越して怒りを抱いた。女性を突き飛ばしておいて何も知らぬ存ぜぬという態度が気に入らないからだ。



(これは……ガンマ殿下には痛い思いをしてもらわないと気がすまないわ)



ミロアは3日前にガンマから受けた仕打ちのことを全て打ち明けた。愛していないという暴言に加え、当てつけのように男爵令嬢をそばに置き、挙げ句には突き飛ばされたこと、その前から自身を避け続けてきたことの全てを。





ミロアの学園でのガンマとの関係をすべて聞いたバーグは、絶句し、



「な、何ということだ……女性に、それも婚約者であるはずの我が娘に暴力を振るうだと? まさかガンマ殿下がそのような男だったとは、何ということだ……!」



そして怒りに震えた。ミロアとガンマとの間に何かあったとは思っていたが、予想以上に酷いことになっていた。その事実を打ち明けなかったガンマへの怒りはもちろん、娘の不遇に気づいてやれなかった自分自身にも怒りを抱かざるを得ない。



「お父様、申し訳ありません。私が見栄を張ってガンマ様との関係を良好だと伝えたばかりにこのようなことに……」


「何故お前が謝るんだ。悪いのはガンマ殿下ではないか。そして、お前の不遇に気づかなかった私の不甲斐なさも悪かったのだ。親として悔しい限りだ……」


(いや、これはどう考えてもガンマ殿下との関係を誤魔化した私に非があるんだけど)


本気で悔しがるバーグの姿にミロアはいい父親を持ったなと思えた。娘のために怒ってくれるこの様子なら、婚約解消も可能だと期待できたのだ。



「お父様、これを機に私とガンマ様の婚約を解消していただけないでしょうか? 言い方が悪いですが、もうあんな男には愛想つきました。とても結婚して幸せになれるなどとは思えません」


「そうだな。暴力を振るうような男なんぞに我が娘をやれるはずがない。しかし、相手は王家だ。長い戦いになるだろうな……」


「そうですね……」



ガンマは王家の人間。しかも王太子の立場にいる。そんな出自と立場を兼ね備えた男との婚約解消となると、申し出るこちらが公爵家でも難しい。何より当のガンマはともかく、今の国王と王妃が納得するかが難しいのだ。


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