第41.3話 心が弱い
(侯爵令息視点)
ガンマ殿下の無駄な行動力は王太子の地位を失う要因としては十分すぎる。俺が聞いても婚約破棄できる理由としては十分すぎるし、ガンマ殿下を国王にするわけにもいかないのは誰が見て聞いても分かりきったことだ。これで王家が拒否するなら貴族の大半が言うことを聞かなくなるだろうし、間違いなくガンマ殿下は失脚だ。そうでなければならない。
だが、油断はできない。ガンマ殿下はともかくその側近のほうが危うい。脳筋のグロン・ギンベスはともかくマーク・アモウのほうが問題だ。奴はおそらくガンマ殿下のしでかしたことの詳細を知っているはずだ。そのうえで俺を利用してミロアのことを探ろうとするのだから何か企みがあるに違いない。ミロアの弱みにでもと考えているのだろう。表面上はともかく中身は狡猾で非情な男だろうからな。
ガンマ殿下だけでなくその側近までろくなやつじゃないなんて、我が国は大丈夫なんだろうか? そもそも王家はどんな教育をガンマ殿下にしてきたのだろうか? 実は王家も……なんて考えてしまうのだが、俺はどうだろう?
名ばかりの侯爵などという陰口が嫌で功績を求めるあまり、いけ好かない王太子側近のマーク・アモウの頼みを聞いてしまう俺は情けないじゃないか。仮にも侯爵令息なのに。しかも、婚約解消の噂を聞いたからミロアに近づいたこともそうだ。それに、印象を変えたミロアに少しでも下心を抱く自分がいる。こんな俺がはたして彼らのことをとやかく言えるのだろうか?
ミロアにこんなに後ろめたい気持ちになった自分が恥ずかしい。上手くは言えないが、俺は俺を許せないのだ。だからこそ、俺は覚悟を決めた。俺が本当はどういう理由でミロアと会おうとしたのか、俺の背後に誰がいるのか白状することにしたんだ。
……いや、違うかな。少しでも楽になりたいだけなのかもしれない。たとえミロアに嫌われる事になったとしても、後ろめたい気持ちを抱えることに耐えられなくなっただけか。結構、心が弱いな俺。
「何言ってるのよ。オルフェが謝ることないでしょ。幼馴染みだけど学園では私っておかしな頭になっちゃってたし………」
「いや、それだけじゃないんだ……実は俺は……!」




