第22.2話 側近は二人
(王太子視点)
「――ということがあったんだ。このままでは僕は王太子の地位を失ってしまいかねない。どうすればいいんだ!」
僕は学園に戻ってすぐに側近の者達に相談した。僕の側近は今は二人いる。以前は三人だったが、そいつは僕と馬が合わないから側近を辞めてしまった。
「それはマズイじゃないっすか! 殿下が王太子にならないんなら俺は騎士団長になれないじゃないっすか!」
僕の立場が危ういと知って見るからに焦るこのガタイのいい男はグロン・ギンベス。濃い茶髪の黒目で伯爵家の次男だ。グロンは騎士団長の息子でもあるが嫡男ではないため、安定した地位を求めて次期騎士団長の座を狙っているのだ。そのために僕の側近をしているのだから焦るのは当然か。
「焦らないでくださいよグロン。みっともない。騎士ならこの程度で焦らないでください」
それと対象的に落ち着いているのは細身でメガネを掛けた知的に見えるマーク・アモウ。明るい茶髪に黒目で伯爵家の長男だ。父親が宰相をやっているから次期宰相の座を当然のことのように狙っている。こいつもそういう理由で僕の側近をしているのだが、やけに落ち着き払っているな。
「何いってんだよマーク! お前だって殿下が国王にならねえと困るだろ!」
「ええ、困りますとも。ですが、ミロア嬢のことはそんなに焦る必要はないでしょう」
「「え?」」
マークは頭がいい。グロンは騎士として武芸に秀でるならば、マークは頭脳明晰と呼ぶべき男なのだ。だからこそ二人は僕の側近ということになった。だからこそ、こいつの言動に期待できる。
「ミロア嬢が婚約解消を願い出たという話ですが、おそらくそれはミロア嬢が殿下の気を引くために父親である公爵に頼んだだけのことでしょう。よく考えてください。今まであんなに執拗に殿下につきまとっていたミロア嬢がいきなり婚約解消をしたいだなんておかしいではないですか。よほど大きな理由がない限りミロア嬢の殿下に対する思いが無くなると思いますか?」
「「っ!」」
そ、そうか! ミロアのやつは僕の気を引きたくて婚約解消を父親の口から言わせたのか! そういうことだったのか!
「……な、な~んだ、そういうことかよ。確かにそうだよな。あの女が殿下がヤバいことをしない限り簡単に殿下を結婚したくないなんていえるはずねえよな!」
「そういうことです。今のところは様子見がいいかと思いますよ」
「そ、そうか、そうだよな!」
その通りだ。僕はそんなにヤバいことなんかしていないぞ! 学園を休んでるのだって、きっと僕の気を引きたくて仮病を使っているだけだ! もっと早く気づくべきだった!




