表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

238/247

第179.3話 今更

(元王太子視点)



ミロアが王宮からレトスノム家の屋敷に帰っていった後、僕は自室でこれからのことを考えていた。



「イーザの地で地方領主か……」



王太子の立場を失った挙げ句に最終的に辺境で地方領主とは、随分と転落したものだ。そこまで落ちぶれるとは思ってもいなかったな。だけど……



「なんでだろう……? 思ったほど悔しい気がしないな……」



悔しい気持ちがあまりわかないのは、僕自信が自業自得だと思っているからなんだろうな。そもそも、今までが僕に都合がいいくらい甘かったとさえ思える。公爵令嬢の婚約者を蔑ろにして、怠惰な生活をした挙げ句、他の女に執心するような男が王太子、次期国王だなんて許されるはずがない。誰もが不安にしか思わないだろう。



「ははっ、皮肉だな。こんなことになってやっと自分を見つめ直せるなんて……本当に皮肉だな」



そして、情けなくて惨めだ。多分、ずっと前から分かってて目を背けていたんだろう。だけど、今は違うと言える自分がいる。ミロアと決着をつけて変われたと自覚できる。



「でも、これからは……もっと変わらないと……」



これから僕の人生は大きく変わる。それに合わせて、いやその前に僕自身が変わらないといけないんだな。反省するべきことをきちんと反省して、周囲の人達の言葉に耳を傾けて、どんなことにも目をそらさないでいかないといけないんだ。



「……そのために何から始めるべきかな? 勉強? 基礎知識? それとも他の何か?」



……何から始めるか。それは地道なところから始めるしかないか。いや、誰かの助言を聞いてからでも遅くはない。そのために側近が王族にあてられるんだけど、あいつらに頼るのは少し違う気がするな。かといって、今更父上と母上に頼むにしても会わせる顔がない……。



そう思っていたんだけど……



「ガンマ殿下。国王陛下と王妃様がお呼びです。すぐ支度なさってください」


「は?」



今度は何だ? ミロアとの話が終わった後に呼び出すなんて……僕は何かやらかしたか? まあ、いいか。もう今更だしな。





そういうことで父上と母上に呼び出されたんだけど……。



「ガンマよ。今一度、王族ではなく親子として話をしよう……」


「親と子として水入らずの話なんて、貴方には今更でしょうけど……」



驚くべきことに、父と母は『王族』を抜きにして僕と話をしようというのだ。



「ほ、本当に、今更だよ……父上、母上……」



思わず声が震える。今更なんだという激情が溢れそうになるのを堪える。当然だ。親子として会話するなんて僕の方からずっと望んできたことなんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ