第179.2話 未来のためにも
(公爵視点)
面倒な連中は片付いた。我が娘に群がる害虫共を一掃するのに成功したのだ。
「予想外だったのはガンマ殿下だな」
まさか、最後に改心するとは思わなかったな。王宮で監視もあるとは言え、ミロアと二人にするのはどうかと思ったが……決着をつけることが出来てよかったものだ。
「いや、本当に予想外だったのはミロアの行動だったか」
あのタイミングでガンマ殿下に謝罪するなど誰も聞いていない。突発的な思いつきの行動だったようだが、それが功を奏したのかもしれん。ガンマ殿下を大人しくさせたのは紛れもなくミロアの謝罪だ。意外といいタイミングを狙っての行動だったのかもな。
「今のミロアが、嘗ての過激な行動のことで頭を下げて謝罪するとは……人は本当に変わるものだな」
言い方が悪いが、ミロアが深く謝罪するなど夢にも思わなかった。昔はともかく今のミロアがだ。大人びて慎ましくより美しくなったミロアがいつまでも子供じみたガンマ殿下に頭を下げる。……父としては見たくはなかったのが本音だ。
「まあ、ガンマ殿下がミロアに対して大人しくなるのだと思えば悪い気はしない。許さず憎まずだというのなら、今後ガンマ殿下がおかしなことをする心配が半減したわけなのだからな」
ガンマ殿下はイーザの地で地方領主となる。王族から小貴族に変わるとなると相当な転落だろう。そんな生活を強いられては不満を爆発させて馬鹿な行動を起こす可能性があるが、ミロアに飛び火しなければそれでいい。
「だが、警戒は怠らないでおこうか。丸くなったとはいえ、生活レベルが変わると考え方も変わるだろう。精神的ショックでミロアが変わったこともあるしな」
そうだ。警戒はするべきだ。マーク・アモウは自由になったし、ローイ・ミュドはまだ何か企んでいる様子だった。だからこそ、この二人には私の方から先手を打った。
「アモウ家にはすでに圧力をかけた。いくら宰相でも、我が子よりも国に重きを置くだろう。国の混乱を臨むような男ではないしな。ローイ・ミュドはすでに罪状が判明しているし、消しても構わんな」
マーク・アモウは圧力をかければどうにでもなるが、ローイ・ミュドは危険な考え方をしている。ああいうのは裏のやり方で舞台から降りてもらわねばな。
「『陰』の出番だ。久しぶりに血なまぐさいことをさせることになるがな」
いずれは『陰』の存在をミロアやオルフェにも伝えねばならん。レトスノム公爵家の、あの子達の未来のためにも。




