第178話 学園に向けて
つまり、後二~三日したら学園に出なければならないのだ。学生としてミロアは再び学園に足を運ぶ。一ヶ月近く屋敷にいたミロアが緊張しないはずがない。周囲の目、好奇の目が気になって仕方がない。
「はぁ……今学園に行くのはちょっと怖いけど、オルフェや専属騎士の二人がいてくれるから安心できるわね」
「そうさ。そもそも、もうこれからの学園には面倒な男たちはいないんだ。最初に想定した危機はないよ」
「そうね……」
今回のガンマの暴走で、ミロアたちにとって厄介な者たちは制限された。ガンマは学園を退学することが決まり、勉学などは王宮で厳しい家庭教師と行うことになった。ローイ・ミュドはガンマを唆したとして退学どころか罪人として捕らえられた。処罰はまだ決まってないが、当分は外に出れないだろう。
国家反逆罪をなすりつけられたマーク・アモウは罪そのものがガンマの狂言だったとしてすぐに自由になったが、ガンマを止められなかった無能な側近として周りから白い目で見られることは間違いない。学園にいる間は大きな動きもできないだろう。
そして、男たちだけでなく今回利用されてしまったミーヤ・ウォームも退学を余儀なくされた。そもそも、身分を偽った罪もそこそこ大きいのだ。
「王族、それも元王太子が退学するとなると多くの貴族たちから王族への態度が変わるわね。国王陛下は再発防止も兼ねて今回の出来事を全て公表するつもりでいるみたいだし」
「……まあ、ガンマ殿下とその側近達の酷さやウォーム男爵家の罪を明かすことはいい見せしめになるのは確かだしな。立場としては間違ったことを公にするだけ……国王陛下は正しいことをしようとしているだけさ。学園に戻るミロアのためにもな」
「ええ……」
ミロアが学園に戻る時期くらい国王も把握している。それに合わせて調整してくれるとも事前に聞いていた。ガンマたちのことを明かすのもその調整ということもあるのだ。
「私の学園の復帰にお父様お母様、家臣の皆やオルフェ、それに国王陛下まで力を貸してくれたんだもの。登校の日は堂々としていこうかしら?」
「ああ、それでいいよ。ミロアは公爵令嬢である以上に俺の婚約者なんだからさ」
「オルフェ……ふふふ、ありがとう」
ミロアはにっこり笑って見せた。オルフェも婚約者の笑顔に見惚れながらも笑顔を返す。そして、二人で笑いあった。




