第175話 陛下も殿下も親子
ミロアとガンマの会話が終わった後、ミロアは国王直々にガンマの処遇について聞かされた。
「……反対意見も多いだろうが、ガンマは王都から離れた場所で地方領主になる。具体的に言うとイーザ地方の担当になるな」
「イーザ……不勉強で申し訳ありませんが、そのような地名を聞いたことがありません」
「無理もあるまい。本当に小さな領地なのでな。むしろ公爵令嬢が知っている方がおかしい。ガンマには彼の地で頑張ってもらう。王家から除籍した上でな」
「王家から除籍。ガンマ殿下は納得……するでしょうね」
「うむ。今ならば素直に受け入れてくれるだろう。地方領主ガンマ・イーザとなることも含めてな」
ミロアも国王もガンマが変わったことを実感している。だからこそ、王太子の立場どころか王族から除籍されることも問題ないと思っている。ガンマは口にしていたのだ。『どんな処罰も受け入れる』と。
「まあ、多くのものが平民に落とせとか口にするのだろうが、ガンマは一代限りの地方領主となる。イーザの地も
豊かとは言えんだろうし、妥当な処遇と見ていい。無論、よほどのことがない限り王家も助けたりはせん」
「……厳しいのですね」
口では厳しいと言いながらも当然だとミロアは思う。ガンマは親に見放されるだけのことをしてきたのは事実なのだから。
「むしろ今までが優しすぎたのかもしれん……いや、違うな。私達が『親』としての責務を果たせなかったことが要因なのだろう。思えば、ミロア嬢と政略結婚させたあの時から私達はあやつの心を無視していたのだろうからな」
「陛下……」
「そういう意味では、そなたにも多大な迷惑をかけた。ガンマへの思いと期待を踏みにじって裏切った元凶は我ら王家にある。謝って済む話ではないが……私からもそなたに謝罪させてくれ。もちろん、許してくれなくてもいい」
ミロアの目の前で国王が深く頭を下げる。その姿を見せられたミロアは驚かずにはいられなかった。先程ミロアを下げたガンマの姿と目の前の国王の姿が重なって見えてしまったからだ。
（……なんというか、こういうところは陛下も殿下も親子なのね。なんだか不思議な気分だわ）
国王は許してくれなくてもいいと言ってはくれたが、相手は国王だからそういうわけにもいかないとミロアは思う。しかし、それでは国王の気が済まないと思うので、許さない相手だけでも限定することにした。
「分かりました。国王陛下の謝罪をお受けします。そして、私ミロアは、ガンマ殿下を許しません。……国王陛下のご子息を一生許さないと誓わせていただきます」
「……さようか」
許さなくていい相手が『誰』なのか言っていないので、これには国王も何も言えなかった。
