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第168話 『ざまぁ』と救い

暴れだしたローイ・ミュドがズタボロになって気を失ったのをいいことに、騎士たちはすぐにローイを縛り上げて拘束した。


そして、率いていた分隊長がミロアに深々と頭を下げる。



「申し訳ございません! ローイ・ミュドの実力を見誤ったばかりに……!」


「気になさらないでください。結果としては、私の目の前で痛い目にあってくれたんですから」



ミロアは笑って気にしていないという。彼女の言葉に嘘はない。不快な思いをしていないという意味でならばだ。



(おかげで、あの気持ちの悪い男が痛い目にあう光景が見れたんですから好都合でした……なんて口にしたくても出来ないのがもどかしい。でも、目の前で『ざまぁ』されてくれたから結果オーライ!)



前世の小説で読んできた『ざまぁ』な展開。実を言うと、ミロアはどんな形でもいいから見てみたいと思っていたのだ。つまり今さっきでその願いがかなったとも言える。不快に思うはずがないわけだ。



(ガンマ殿下は……返答次第になるけど、あの様子なら改心もありかな?)



その一方で、ローイがボロボロにされても大人しくなっているガンマを見ていると、流石にガンマまで痛い目にあってもらわなくてもと思わないでもない。ある意味でガンマも被害者だとも言える。



(今日の計画はローイ・ミュドが考えたとしか思えない。言って悪いけど、ガンマ殿下の頭で思いつくとは思えないしね。後は……)



ミロアはガンマのそばで項垂れる壮年の男を見やる。今回の重要人物の一人と思われるウォーム男爵だ。彼の娘のミーヤがオルフェを口説いて誘惑する役割を担っているようだが、気弱そうな外見に男爵という身分では黒幕とは考えにくい。



(多分、利用されてる側なんでしょうけど何か弱みを握られたのかしら? 男爵は比較的温和な人物で娘を溺愛していると聞いてるし……? あっ)



ミロアが考え事をしている時、普段のオルフェの格好をしたゴウルがこちらに合流するべく向かってくるのが見えた。その横にはミーヤ・ウォームと思われる少女が感情をなくした顔で一緒にいた。



「ミーヤ・ウォーム男爵令嬢……」


「ミーヤ!」



娘の存在に気づいた男爵は走り出そうとしたが騎士たちに止められる。ローイのように剣術の腕はないようだが、それでも必死に娘の名を呼びながら抵抗を続ける。


ただ、その抵抗も娘の方から近づいたときには止めていた。



「お父様、申し訳ありません。私は、ミーヤは何の役にも、」


「子供がそんなことを心配するな! 全ては不甲斐ない私が悪い……私が、もっとしっかりしていれば……!」


「お父様……!」



涙ながらに謝罪し合うウォーム男爵親子。彼らを目にしたミロアは、黒幕はやはりローイ・ミュドしかいないと思った。いや、そうであってほしかった。



(こんな親子に『ざまぁ』なんてあってはならない。救いのほうが必要だわ)



男爵親子に何かしらの救いがほしい。ミロアはそう思わずにはいられなかった。

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