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第165話 劣等感

ガンマはミロアのことを嫌っていたのは確かだ。その理由はミロアの過激な思いが原因だが、実はそれだけではなかったのだ。



(こいつは……ぼくよりも……!)



婚約してから、ガンマの両親は事あるごとにガンマとミロアを比べるようになったのだ。本人たちはガンマのためを思って発破をかけるつもりのようだったが、ミロアはガンマよりもかなり優れた存在だったため逆効果になった。ミロアはガンマよりも多くのことで勝っていたのだ。成績、習い事、知識、競えば必ずガンマが劣る。そういうところでもミロアのことを嫌っていたのだ。


つまり、劣等感も原因だったのだ。



(こんなことを今なんで思い出して……いや、だからこそ……)



ミロアに対する劣等感、それゆえガンマはそれを理由にミロアとまともに取り合ったこともない。だが、今度ばかりは流石に取り合わないわけにはいかなかった。



(ミロアが僕に今までのことを謝罪する……僕はそれをずっと見たかったはずなんだ! なのに……)



ガンマは密かに望んでいたのだ。ミロアがこれまでの行動の数々を謝罪し、深々と頭を下げてくれることを。そして今まさに、ガンマの望んだ通りになったのだ。


しかし、ガンマは喜べないどころか自分に怒りを向けている。



(なんでだよ……なんで、僕は、ミロアは!)



ミロアがこれまでの行いのことで謝罪するはずがないと思っていただけに、ガンマは自分が恥ずかしくなったのだ。子供の頃から今もあまり変わらないままでいる自分が。



(なんで……ミロアが変われて、僕は何も変わらなかったんだ! いや、それどころか……!)



ガンマも自分が子供の頃から何も変わっていないことに気づいていた。むしろ、歳を重ねるごとに周りの評価が低くなっていることさえも理解していた。それなのにいつまでも良い方向に変わらない。ガンマはそんな自分に嫌気が差していた。



(それなのに……ミロアはこんなに! これじゃあ、僕は本当に馬鹿みたいじゃないか……いや、馬鹿だな……)



ミロアの謝罪を受けて自分に対する負の感情が沸き起こるガンマだったが、そんな気持ちを吹き飛ばす言葉がかけられた。



「ガンマ殿下。私の謝罪を受け入れてくれますか?」


「っ!? う、あ……」



それはミロアだった。顔を上げて、まっすぐにガンマの顔を見つめるミロアの顔は真剣そのもの。そんなミロアの顔などガンマは見たことがない。息を呑むほど美しい、気品と気高さを見せる公爵令嬢の顔だった。



「僕は……」



ミロアの謝罪に対するガンマの答えを求められ、ガンマはたじろぐ。だが、無言を通すわけにもいかない。状況が一切許せないし、ガンマ自身も答えなければならないと思った。

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