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第164話 謝罪

そして、ミロアの口から誰もが驚く言葉が出てくるのであった。



「嘗ての私……ガンマ殿下の婚約者だった頃の私は貴方の気持ちを一切考えていませんでした。初恋に熱くなって貴方自身も周りも見えなくなり、自分がしていることの大きさもろくに理解もせずに、周りの言葉も貴方の拒絶の言葉も聞こえなくなっていました。冷静になれば気づけたはずなのに、自分が正しいと信じて愚直に突き進んできましたが、それはどうしようもなく幼くて愚かなことでした」


「え…………え?」


「ガンマ殿下。私のこれまでの……幼い頃から婚約破棄に至るまでの愚行の数々、改めて深くお詫びいたします。とても、許していただけることではありませんが……本当に申し訳ありませんでした」


「「「「「…………っ!?」」」」」



この場にいる誰もが耳を目を疑った。『今の』ミロアが、ガンマに対して謝罪したのだ。己の非を認め、深々と頭を下げた。それほどの行為の意味するのは、貴族として本心から自分に非があると認めたということだ。あれだけガンマを毛嫌いするようになったミロア・レトスノムがだ……!



「み、ろあ……?」



ガンマもまた周りと同じ気持ち……いや、誰よりも衝撃を受けたようだ。慎ましく大人びいた印象を与える姿と性格に豹変した嘗ての婚約者が、己の非を認めて頭を下げたのだ。



(……一体何を見させられているんだ、僕は……?)



今、ガンマの目の前にいるミロアは、とても美しく見えた。気品があり、慎ましく、礼儀正しいミロアの謝罪。いつの間にか瞬きできないほど目が離せないでいた。しかし、その一方で昔のミロアの姿が不思議と重なって見えたのだった。



『ガンマ様、一緒に遊びましょう!』

『そ、そうだね……』

『ガンマ様、私の手料理なんです。食べてください!』

『う、うえっぷ……』

『ガンマ様、王立学園では一緒に登校しましょうね!』

『馬車は別々だ! できるわけないだろ!』



子供の頃から一緒にいたガンマとミロア。ミロアは一方的にガンマについてきて、ガンマは仕方なしという感じで可能な限り付き合った。



『ガンマ様、一緒に図書館に行きましょう』

『そんな暇はない!』

『ガンマ様、私の手料理なんです。食べてください!』

『いらない、王宮の料理人が作った弁当がある!』

『ガンマ様、一緒に課題をしましょう……』

『他の者とグループを組んだ。必要ない!』



それが互いに大きくなるにつれて、ガンマはミロアを拒否するようになったのだ。過激なことは勿論、些細なことまでガンマはミロアのすべてを拒否するようにしてきた。



(……ミロアは本当に変わった。それを僕は、どうして喜ばない、喜べないんだ? ミロアのことは今も嫌いだ。王太子の座を保守するための駒くらいにしか思えない。だけど、こんな姿を魅せられて僕はなんで……!)



ガンマはもう何が起こったのか分からないという気持ちだった。ミロアだけでなく自分の胸の底から沸き起こる感情さえも理解できないのだ。



(どうして僕は……こんなにも!)



ガンマの心には、自分自身に対する憤りで溢れかえっていた。

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