第163話 元々の原因
元々の原因はガンマだけではないことに。
(まずは、敗戦国ゆえの事情から私と殿下の婚約が決まった。すべての始まりはそこからなのよね。その時点で殿下は不満があったけど、国王陛下の命令に反対できなくて渋々私の婚約者になった。その後の私の過激な行動……ストーカーまがいの行動に精神的に疲弊してしまった。両親との家族関係も上手くいかなかったこともあって、王太子にふさわしい人格形成は出来なかった。……まあ、勉学とかをおろそかにしたのは殿下の責任だけどね)
いい年して子供のように吠えるガンマをよくよく観察していると、今にも泣きそうな顔だった。すでに恋心をなくしたミロアでさえも哀れに思うほどに惨めな顔。流石に思うところがある。
(考えたくはなかったけど……ガンマ殿下の性格がこんなのになったのは、前世を思い出す前の私のせいよね。一目惚れしたからって随分と過激な行動をしてしまった結果が今のガンマ殿下の姿……)
ミロアはガンマの気持ちを考えたことはなかった。それは前世を思い出す前も後も同じことだった。しかし、今喚き散らすガンマの情けない姿を見て、目をそらしていた現実を突きつけられてしまう。
(……結局、全部が全部ってわけじゃないけど、私にも非があるのよね。お父様やオルフェが口にしないだけで、その事実は変えられない。向き合わなかったガンマ殿下もろくに注意しなかった国王夫妻や大人たちも悪いけど、私も認めないといけない。それなら私の言わなければいけないことがあるわね……)
ミロアは少し前に出た。ちょうどガンマの正面に立つ位置まで止まると、そこでガンマを真剣な目で眺める。
「ガンマ殿下」
「っ! ミロア、今度は何のつもりだ!?」
「おい、ミロア!?」
「ミロア嬢!?」
ガンマどころか、そばにいたオルフェも騎士たちも驚いた。ミロアの行動が聞いたことと違うからだ。いくら護衛がいるからといってもガンマの前に出すぎるのは危険すぎるはず。
「ガンマ殿下、いい機会なのできっぱりと言わせていただきますわ」
「「「「「っっ!?」」」」」
それでも、ミロアは止まらない。




