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第18話 意図的に

ガンマは机を叩いた。あまりにもミロアが劇的に変化したことと、ミロアの口から婚約解消を望むような声を聞いたことで、動揺して冷静な判断ができなくなって感情的になったのだ。



「公爵の口から僕がお前を突き飛ばしたことを話したせいで僕がどれだけ迷惑したと思っているんだ! おかげで父上と母上にこっぴどく叱られて、弟に冷めた目で見られたんだぞ! 宰相や騎士団長まで苦言を言われて悔しかったんだぞ! 全部お前のせいだ!」


(いや全部自業自得じゃない。やっぱりこの男は最低な部類に入るわね)



激しい怒りをあらわにするガンマに対し、ミロアは冷静だった。こうなる展開も予想していたこともあり、何より対策もしていたからだ。



「ですが、それは殿下の責任でしょう」


「何!?」


「女性を突き飛ばすなど紳士の振る舞いではないと分からないのですか? 周りの方々は正しく評価されているではありませんか。そのことで殿下が私に怒りの矛先を向けるのは筋違いですよ」


「お、お前……僕の気を引きたいからって……!」



ガンマは怒りの形相で椅子から立ち上がり、ミロアに近づいてその胸ぐらをつかんだ。そして、そのまま拳を振り上げようとするではないか。



(うまくいったわ!)



それでもミロアは表情を変えない。いや、笑いを抑えようと必死だった。何故なら、『意図的に』こうなるように仕組んだのはミロアなのだ。当然、この後の展開もだ。



「お前ごときがつけあがるな! お前のせいで――」


(今ね!)


「お嬢様から離れてもらおうガンマ殿下」


「ここは我らの主の屋敷、いくら王族とて好きにはさせられぬ」


「……え? 痛っ!」



ガンマが振り上げようとした右拳は、屈強な兵士の手によって掴まれていた。ミロアの両脇にいた兵士の一人だ。筋骨隆々の巨漢でスキンヘッドの壮年の男、ダスター・ドウだ。



「ひっ! 離せ……痛って!」


「ガンマ殿下。一度だけでなく二度も私に暴力を振るうとは……悲しいですわ(対策してたけどね)」



ミロアの声に反応してガンマは彼女の方を振り返ると、白髪の初老の兵士の背に隠れていた。筋肉質で逞しい体つきのもうひとりの兵士、スタード・アストだ。



「み、ミロア! こいつに言って僕の腕を離し……痛てててて!」


「残念ながらそうもいきませんわ。殿下は私を殴ろうとしていました。そんな人をすぐに解放するほど私の屋敷の兵士は甘くはありません」


「そんな……あああああああああ!」


(まあ、そういう事態になった時にどうしてほしいか事前に言っておいたけどね)


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