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第150話 嫌われていることも知らずに

一方その頃、ウォーム男爵の屋敷を出たガンマ達はオルフェを陥れるべく、身繕いを整えたミーヤを連れてオルフェの行く先へと向かっていった。



「本当にこの先でいいのか?」


「はい。奴の予定はすでに把握済みです。ミロア様との正式な婚約したことであの男は忙しくならざるを得ないのです。親戚は同じ派閥の者に報告したり顔を出したり、ミロア様とレトスノム家に合わせた物資を購入しなければならなかったりと、外出も必要になるのです。貴族として避けて通れないことですね」


「え? そうなのか? 僕の時はそんなこと無かった気がするけど?」


「……それは殿下が幼い頃に婚約したから両親である国王陛下と王妃様が全て済ませたのでしょう」


「それなら、オルフェってやつも同じように親に頼めばいいのに」



オルフェは青年だ。子供のように全てを親にやってもらうわけにはいかない。そんなことも分からないのかとローイは呆れた。



(こいつ……まあいい、今日は流石に大人しくしているでしょう。いくらオルフェが破滅する瞬間の証人になりたいだと言っても、学園の件に懲りて騒ぐようなことはしないでしょうね)



ローイは本心ではガンマまで連れて行きたくなかった。だが、ガンマが「この目でオルフェが破滅する瞬間を見たい!」などと我儘を言い出すので仕方なく同行させることにしたのだ。



(ミーヤ嬢にオルフェを誘惑させて、都合のいい場面を写真機で撮る。それだけは頭に入っているようですから、騒がなければ余計なことをしなければ大丈夫……問題はミーヤ嬢のほうですね)



ローイはミーヤの方に視線を移す。計画のためにも髪を直し、普段しないような上級貴族用の化粧をしてしるミーヤはまるで人形のように整って見えた。ローイでさえ息を呑むような美しい姿になったので、これなら誘惑はうまくいくと思わざるを得ない。



(ボサボサだった髪を整えて、化粧をより品質の高いものに替えた。それだけでここまで……これは大抵の男なら振り向くでしょう。殿下達が執心するのも致し方なしですね)



男爵の屋敷に来たときのミーヤは部屋に引きこもりっぱなしだったせいか、身なりは悪く見えたために印象は良くなかった。ローイはこんな女のどこがいいのかと疑問に思ったのだが、少し身なりを整えただけで大きく変わったことでガンマたちの気持ちが嫌でも理解できた。



(彼女の美貌ならうまくいく……後は、彼女の気持ちと演技力次第か……)



今のミーヤは無表情で、一切の感情の色が見えない。昨日の様子から絶望感や悲壮感があるだろうと思っていたのだが、それすらもない。不気味さを感じさせるほど無感情で何も感じさせなかった。



(……全て諦めて従うしかないと理解して無用な心を捨てた? もしくは、何かしらの抵抗を目論んでる? いや、こんな女にそんな頭はないか)



ローイは少し心配になったが、男爵家の事情を鑑みれば抵抗するすべなどない。杞憂だと判断して思考を愛する者へと移した。



(ミロア様、待っていてくださいね……)



その愛する者から嫌われていることも知らずに。

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