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第148話 男爵親子

ガンマとローイ・ミュドがそれぞれあてられた客室に戻っていくのを確認した後、男爵とミーヤは親子二人だけで会話を始める。



「……すまないミーヤ。私にもっと強い力があれば、あんな王子の言葉に従わずに済んだのに……」


「いいんですお父様。あの人達に私達の弱みを握られている以上、私が従えばいいだけなのです……。私の出自のことを知られてしまった時点で、私に選択の余地はありませんもの……」


「だが、しかし……お前は私の娘であることは変わらないんだ! 血筋なんてどうでもいい! それなのに……」


「お父様、私は……」



血が滲むほど拳を握るくらい悔しがる男爵をミーヤは心から労る。その姿は本当の親子に見えるが、実はこの二人には血の繋がりはなかった。



「……まさか、お前が拾った子供だということが、今更になって知られてしまうことになるとは思ってもいなかった……しかも、よりにもよってあの様な男達にその弱みを……」


「ごめんなさい……私のせいで……」


「違う! お前の将来を思うあまり、実子と偽った私の落ち度だ。全ては私のいらぬ気遣いのせいで……」



貴族社会において、貴族が平民の養子を持つことは容認されている。だが、平民の養子は周囲に馬鹿にされやすい。ましてや、身分の低い貴族の家ならば尚更だ。男爵はミーヤが貴族社会で不利にならぬように血の繋がりのことを偽っていたのだ。


その弱みをガンマとローイ・ミュドに知られて理不尽な計画に利用されることになってしまったわけだ。



「今になってミーヤが養子だと言えば周りから責められる……隠し通すためにもあの男達に従わなければならない。ああ、私がもっとしっかりしていれば……!」


「お父様、過ぎたことは仕方がありません。私の出自を明かすか殿下たちに協力するか考えた結果、協力すると決めたのは私達です。もう、決めたことに従うしかありません……」


「本当にすまないミーヤ……私が不甲斐ないばかりに……」



家を守るためにも、そして何よりミーヤの将来のためにも従うことにしたのは男爵親子の総意。それでも、男爵は涙すら浮かべてミーヤに謝り続けた。謝罪を受け入れるミーヤは悲しげな笑顔をするだけだった。





男爵親子は計画に加担しても家と娘の将来は守れるかもしれないと思い込んでいた。



「殿下、本当ですか?」


「ああ、全てが終わった後になるが、僕はミーヤの出自を明かすつもりだ。どういう結果になろうともな」


「ウォーム男爵の立場を保証すると言う約束でしたが?」


「平民の娘のせいで僕の立場が悪くなった事を考えてみろよ。約束を破る理由には十分だろ。そもそも、出自を偽っていた時点で許されることじゃないんだ。それくらいされて当然じゃないか!」


「……まあ、いいでしょう。もとを辿ればミーヤ嬢もミロア様が苦しむことになった要因。こんな男爵家など潰れて当然でしょう」


「ははは! そういうことだ!」



だが、脅す側のガンマ達は男爵親子の思いを踏みにじるつもりでいたのだ。つまり、結果がどうなろうと最終的にウォーム男爵家は破滅するということだ。


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