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第144話 人間不信

レイダのブラッド家は名門だが、今の当主は保守的な一面が強い。だからこそ、宰相の家とぶつかって失うものが多いと思って穏便に終わらせたかったというわけだ。



(王家の遠縁で当主が宰相の家と敵対すると思うと気が引けるわよね。娘の面子と家の存続は天秤にかけるまでもないと判断したわけか……その代償がレイダ様の人間不信というわけね)



人間不信。人が信じられなくて不安になったり自暴自棄に陥りやすい状況というわけだ。それはレイダだけでなくアギアも同じ、いやそれ以上だった。



「……私、婚約者だったグロン様のために、毎日宿題や課題を代わりにしたり、時にはお金を貸したりしていたんですけど、結局捨てられてしまって……」


(毎日宿題や課題を代わりに? うわぁ、騎士団長の息子は最低な男だったんだ。いくら家の立場に格差があるからって……アギア様も捨てられたって口にしてるし……)



アギアの元婚約者だったグロン・ギンベスの家は名門で、今は違うが当主は騎士団長だった。それに対してアギアの家は伯爵に成り上がったばかり。互いに伯爵の家であっても格が違うと言われて仕方がない。しかし、アギアの扱いが酷すぎた。しかも、婚約解消した後も酷い。



「……その後は、グロン様と関わりがなくなったんですが……グロン様が罪を犯して学園からいなくなった後で、誰も彼もが私から遠ざかるようになって……寂しくて仕方がありません。でも、誰も信じられる人がいなくて……」


(婚約解消したのに男のせいで孤立……幸薄い印象があったけど、本当に悲惨な目にあってるじゃない……)



グロン・ギンベスは公爵を襲った罪で姿を消した。そんな男の関係者が学園にいるとなれば多くのものはいい気はしないだろう。レイダのようにプライドが高いわけでもないため、気丈に振る舞うこともできそうもない。口にしていないが苛めを受けても仕方がないくらいだ。



(貴族社会の残酷さが見えるようだわ。これは早急に誰かが心の支えになってやらないともたないかも……)



弱った者を貶める。貴族の世界の残酷な一面にミロアは吐き気がした。それ以上にミロアは自分の前世に嫌悪感を抱いた。



(前世では……小説とかに貴族のこういう残酷な一面にも面白みを感じていた事もあったけど、読んで見るのと人の実体験として聞くとではだいぶ違う……こんなのを前世の私は……!)



前世の投稿小説や恋愛小説で出てくる貴族社会の闇の部分。話の題材の一部でしかないとは思いつつも、今はそういう世界で生きているミロアとしてはそう簡単に割り切れなかった。


ただ、今は自分の前世のことなど関係はない。今は目の前の現実に向き合わなければならない。



(……落ち着け私! 今はともかく、二人の心に必要な言葉をかけないと。こういう人達には信じ合える人達が必要なのよ。一人でもいいし、彼女達どうしでも……まずはきっかけがいるわね)



今この場で彼女達の心の闇を少しでも晴らす。そのためにミロアは前世の知識を応用した言葉を使う。



(結局、前世に頼るのか……まあ、仕方ないか)



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