第140話 言動から行動を読む
「お二人の覚えている程度でいいのですが、ガンマ殿下や側近の男達の言動を詳しく教えてもらえませんか? 具体的な言動から次の行動が読めると思うのです」
言動から行動を読む。それは前世の記憶を応用して方針や行動を決めてきたミロアならではの思いつきだ。登場人物の言動から行動を読むということ自体、前世で小説を読んでよく無意識にしていたことでもある。
(手っ取り早い方法だけど、男性の言動をそのまま声に出すのは二人は渋るかも? 仮にも貴族令嬢だし)
「げ、言動ですか……確かにそれなら……」
「……分かりました。私も近くにいたからよく聞こえていたので……」
レイダもアギアも少し引き気味ながらもガンマとローイ・ミュドの口にしたことを的確に教えてくれた。聞くに堪えない王子と側近たちの言葉を。
◇
「――オルフェが危ないじゃないですか!」
「「っ!?」」
レイダとアギアから教えてもらったガンマとローイの言動から、ミロアは次に彼らが狙うのは婚約者のオルフェだと確信した。思い至った直後にミロアは立ち上がって声を張り上げだした。
「私とオルフェを別れさせるように命じようとしていたなんて、馬鹿王子め……っていうか、お二人共そういうことは先に言ってくださいよ! こっちに来る前にオルフェが危ないことくらい察することくらいできるでしょう!?」
「「は、はい……」」
ミロアは激しく動揺した。オルフェが危ない。そう思うと様々な感情が溢れて冷静さを保てなくなったのだ。ガンマたちに対する嫌悪感と怒り、オルフェに関わる危険に対する恐怖、振り廻されることへの嘆き、もう頭の中は滅茶苦茶になる寸前だった。レイダもアギアもミロアの動揺ぶりに呆然とするしかない。
(どうしようどうしよう!? 側近を国家反逆罪とか訳の分からない理由で冤罪にするような王子と元側近がコンビになってオルフェを……下手をすれば亡き者に!? ああ、もっと早く危機感を持てばよかったじゃない!)
実を言うと、最近のミロアはガンマたちのことを甘く見ていたフシがある。それというのも、王家の有責で婚約破棄
できたり、ガンマの側近の一人が馬鹿なことをして消えたり、一日でオルフェとの婚約ができたものだから、ミロアは自分の将来は前世の記憶のおかげで大丈夫だと思ってしまっていたのだ。
しかし今は違う。一昨日と昨日のことを聞いてガンマたちの危険性を改めたのだ。だからこそ、今は大きく動揺してしまう。
「な、なんとかしないと! すぐにオルフェに危険が迫っていると……!?」
ミロアは控えていた侍女のエイルの方を振り返る。ただ、エイルの顔には一切の焦りはなかった。
「お嬢様、オルフェ様に関わる危険に関してはすでに対処していますのでご安心ください」
「…………え?」
しかも、ミロアの思考が止まる発言まで口にだした。




