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第139話 実家には期待できない

だからこそ、目の前の二人の伯爵令嬢の存在は重要になるのである。



(この二人からもっと細かい情報がほしいわね。後で次の方針とか決めなきゃいけないしね)


「確かに、今の学園の状況は大変よろしくないとお二人の話で分かります。そんな事になってしまった原因……ガンマ殿下が次に何をしようとしているのか、私達はそれに対してどのように行動すべきか考えなくてはなりませんね」


「その通りです。もう、自分勝手な男達のいいように振り回されるのは御免ですから」


「そうですね、学園までおかしくなるのもおかしいですし……」



ガンマたちが何をしようとしているのかまでは分からない。だが、この二人も伯爵という上級貴族の出自だ。それなりの情報収集くらいはできるのだ。それをもって公爵令嬢のミロアのもとに来たのは、ミロアにとって幸運と言えることだろう。



(彼女達がうちの屋敷に来てくれて本当に良かったわ。でも、実家の方はてんで頼れそうにないわね)



会話中に、レイダもアギアも口を揃えて『実家には期待できない』と遠回しに口にしていた。特にレイダの方は怒りすら感じさせるような口ぶりだったのだ。



(この二人の実家が大きく動くということがあってもいいんだけど、下手なことをして状況を悪くされても不味いとも思ってた。だけど、さっきの口ぶりだと二人の実家はこの件には消極的みたいね。そもそも、この二人だけが私に頼ろうとしている時点でブラッド家もファング家も動きそうにないか。それ以前に、男の方に問題があるのに『穏便に婚約解消』しているんだから彼女達の実家から協力というのは期待しないほうがいいか)



ファング家はともかくブラッド家は名門でそこそこ力のある貴族だとミロアは知っている。今の当主であるレイダの父が大臣の職務に就き、親戚も多く、派閥の中でも重要な立場にいるとも聞く。その派閥というのが今の宰相の側にいるのだが。



(宰相ってマーク・アモウの父親よね。おそらくレイダ様の父親は派閥関係でやむなく婚約を解消という形にしたんでしょうけど、レイダ様は納得できなくて親子関係に溝ができたわけね。彼女の口ぶりから父親に対する愚痴が混ざってたし)



実を言うと、ミロアはレイダもアギアもガンマかローイ・ミュドのスパイではないかと疑うこともできた。だが、それ以前に彼女達のことも大体調べられていたので、その可能性は低いことも屋敷に来る前から分かっていたのだ。



(ファング家は純粋に立場の違いによる格差が要因で婚約解消……アギア様は控えめだけど、腹の底では根深い怒りをはらんでいる。見た目が優しそうな人に限って実は怖いなんて恋愛小説・乙女ゲームの定番だもんね)



そして、実際に会話してレイダもアギアも味方に引き込めると確信した。二人共、ガンマたちの一派に怒りと憎しみを抱いていると分かったからだ。



(……こういうドロドロした話って、読者の……ああ今は違う違う。今は私の将来のために頭を動かさないと!)



読者の関心を集めそう……などと不謹慎なことを思いそうで止めた。ミロアは前世に染まりすぎず、『ミロア』として生きていきたいからだ。

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