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第16話 襲来

レトスノム公爵の屋敷に一人の青年が通された。艶のある短い黒髪と青い瞳の整った顔立ちだが、明らかに不機嫌そうに顔を歪めている。



「遅いぞ! この僕を待たせるなんてどういうつもりだ!」



遠慮なく不満を叫ぶ彼こそがドープアント王国の第一王子にして王太子ガンマ・ドープアント。彼は自分の婚約者を問いただすために来たのに長いこと待たされたと思って怒りをあらわにしているのだ。事前に約束もしていないのだから待たされても文句を言えないというのに。



「僕はミロアの婚約者だぞ! 忌々しいことにな! それなのに待たされるなんて最悪だ! 不愉快だ!」



仮にも公爵家ほどの貴族の屋敷だというのに怒りを喚き散らすガンマ。その態度に使用人たちは内心腹立たしく思っているが立場を考えると諌める勇気が出ない。



「ミロア! ミロアはいるか! この僕が来てやったぞ!」



ガンマはノックもしないで客間の扉を乱暴に開いた。その直後、ガンマは身構えた。『いつも』なら、ガンマから屋敷に来たりすればミロアが抱きついてくるのだから。



(うっとおしいんだよなあの女……あれ?)



しかし、予想に反してミロアと思われる女性がガンマに抱きつくことはなかった。その代わりに目に映ったのは、椅子に座ってじっと待つ美しい女性とその両脇に立つ二人の屈強な兵士だった。特に女性の方は、ガンマの知るミロアと違った印象を与える姿にガンマは困惑した。



(なんだこの女? ミロアに妹はいたが姉はいないはず……? もしや母親か?)


「ガンマ様。ようこそお越しいただきました」


「え?」



困惑するガンマの耳に聞いたことがある声が女性から発せられた。ガンマのよく知る婚約者の声に間違いなかった。



「そ、その声はミロア……なのか?」


「はい、ミロア・レトスノムですわ」


「ええっ!?」



ガンマは呆然とした表情で固まってしまった。ミロアの姿がガンマの知る姿と大きく変わったからだ。ガンマの知るミロアは血を彷彿する赤い髪を腰まで伸ばし、ドレスも化粧も派手で目立つ存在だった。


だが、今ガンマの目の前にいるミロアは以前とは対象的な姿だった。赤い髪は艷やかになって肩口に収め、ドレスも化粧も慎ましい印象を与える。これでは以前とは逆だと言っても過言ではない。



(お、落ち着け……どうせ外面だけだ。今は驚いている場合じゃない)



ガンマはミロアの変化に驚きつつも、ミロアと面と向かい合うように椅子に座る。本来の目的のために問いただすことにした。

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