第135話 令嬢たちの決意
昨日の騒ぎの要因は第一王子ガンマ・ドープアントだった。そんな彼に振り回されそうになったのが、マーク・アモウ。そして、そのガンマさえ振り回したのが元側近のローイ・ミュドだった。
「でも、そのお二人は……」
「確認してみたら体調不良で欠席……まあ、これない理由も分かりますがね」
そして、今日に限ってガンマとローイは学園を欠席してしまっていた。いや、今日だからこそ欠席したというのが正しいかもしれない。レイダもアギアもそんなふうに思っている。
「殿下達が何か企んで動いたからこんな状況になったのでしょうか? ミロア様を都合のいいようにしたいがために?」
「もしも、そうだとすれば……あまりにも女性を虚仮にしていると思えて許せませんわね……」
「……やはりそんな思惑があの方々に……」
レイダは怒りがこみ上げてきた。それは連行されていったマーク・アモウではなく裏で糸を引いているであろう者達に対する怒り。レイダもアギアもミロアとは関わりがないが、同じ女として不愉快で仕方がないのだ。
その気持ちはアギアも同じ、嘗て婚約者だった男に都合よく扱われるという苦い思い出があるため男の身勝手が許せない。
「王家や上級貴族の男達の良からぬ思惑で踊らされたり振り回される……そんなのはもううんざりですわ」
「レイダ様……私も同じ気持ちです」
「アギア様、でしたらどうすればいいと思いますか?」
「え? え~と……」
どうすればいいというのは『男達の思惑で振り回されない』ためには自分達はどうするべきかということだ。レイダの言葉の意味をすぐに理解するアギアは思考を巡らせる。
そして、控えめな性格だが、仮にも学園のトップクラスのアギアの頭脳が導き出した結論は『元凶を断つ』ということだ。だが、そのためには彼女達だけでは力不足。だからこそ、力になってくれそうな人を強い味方に迎える必要がある。
その力になってくれそうな人というのは、今学園を休学している公爵令嬢なのだ。
「公爵令嬢ミロア・レトスノム。彼女の力が必要ですわ」
「ええ、その通りです」
レイダがアギアの導き出した答えを聞いて笑みを見せる。二人の答えは最初から一致していたのだ。そして、この後の行動も同様……
「まずは、今日中に『明日会いに行く』という内容の手紙を届ける必要がありますが……」
「それなら昨日のうちに出しているので大丈夫ですよ」
「ええ!? どういうことですの!?」
「昨日の騒ぎの時点で、ミロア様と相談する口実ができたと思いましたの。まあ、今日のことで話す内容が増えましたから非常に長い話し合いになることでしょうね」
「そ、それは、大変でしょう……」
「勿論、貴女も同席していただきますわ。貴女も当事者ですしね」
「そういうことは早く言ってください!」
……というわけでもなかった。




