第133話 国家反逆罪?
ミロアが目覚めてから二十四日目。学園は昨日の騒ぎの話題でまだ騒がしかった。だが、この日はまた別の意味で騒がしくなることとなる。
それは一人の伯爵令息、それも王族の側近の不幸から始まった。
「マーク・アモウはいるか!」
「「「「「っっ!?」」」」」
朝から、王宮の兵士と思われる者達が教室に入ってきてそう叫んだ。名指しされたマーク・アモウは何事かと思って振り返り自ら前に出た。
「私がマーク・アモウですが、王宮の兵士の方々が何事でしょうか?」
「マーク・アモウ! 貴殿に国家反逆罪の嫌疑がかけられている! ご同行願いたい!」
「はあっ!?」
「「「「「っっ!?」」」」」
国家反逆罪? 自分に嫌疑? そんなことを叫ぶ兵士。全く身に覚えのないことで呼び出されたのだと悟ったマークは何がなんだか分からなかった。
(どういうことだ? 誰かが私を陥れようとしているというのか?)
「な、何のことか全く理解しかねます。私は宰相の息子ですよ。国家反逆罪などと人聞きの悪い、」
「貴殿は昨日、第一王子ガンマ殿下の立場を意図的に悪くして陥れようとしたという疑いがある。それ以前に王族の側近にあるまじき行動が目立つとも聞く。事実、昨日の学園はガンマ殿下の悪評が有無関係なく広がっていた。貴殿がそれを仕組んだようだな」
「なっ!?」
昨日の騒ぎのせいで確かにガンマの立場は悪くなった。酷い態度でミロアとオルフェの婚約したことを明かし、あからさまにそれが気に入らないようなことを叫ぶ始末。これでは悪評が広がっても仕方がないが、それは何もマークの責任だとは言い難いし、そもそも沈黙を貫いていた。
(何だそれは!? とんでもないこじつけではないか!?)
「昨日のことはガンマ殿下が自ら騒ぎを起こされたことです! 私は何も聞かされていませんでした! 最初から相談されていれば私は何が何でも止めました!」
「ガンマ殿下のそばを離れて逃げ出したと聞いているが?」
「そ、それは……あの時、私がそばにいても騒ぎがひどくなるだけだと判断してのことで……」
(誰だよ、そんなことを喋ったのは!? まさか!?)
「が、ガンマ殿下が私を疑っておられるのですか?」
一応主であるガンマが自分を……と考えたが、ガンマの頭で自分を陥れるだろうかと思った。ただ、ガンマがマークを陥れる理由はないが可能性もゼロではない。しかし、状況は考える時間をくれない。
「そのガンマ殿下をはじめ王家の方々はひどく失望されている。詳しい話を聞くためにも今はご同行を願う。話の過程で容疑が晴れるかもしれないからな」
「……そうですね、今は貴方方と長く詳しく真面目に話をしたほうが賢明でしょう。共に参ります」
余裕そうな笑みを浮かべるが、マークの頭は屈辱感に満ちていた。
(おのれ……一体誰が何のために……)
苦虫を噛み潰す思いでマークは兵士と共に教室を後にして、そのまま学園からも去った。
これを機に、新たな騒ぎの噂が始まった。




