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第131話 うってつけの相手

成功すれば効果は大きく、失敗しても軽い傷で済む。そういう手段を選びたいのはガンマも同じだ。ただでさえ、次期国王から将来男爵にまで人生設計が転落したのだから。



「……不貞をさせる。それしか方法がない。だが、どうやって? よほどの相手でなければミロアの幼馴染を浮気させるのは無理があるのではないか?」


「くくく、それなのですがうってつけの相手がいるではありませんか。殿下のよく知る者の中に」


「何?」



ガンマは首を傾げる。自分の知る者の中にローイが言うような人物、オルフェに不貞をさせられるような者が、女がいるなどと……



(いやまて、女? 僕のよく知る女といえばミロアくらいしか……)



ガンマのよく知る女、その代表格はミロア・レトスノムだ。それ以外にガンマのよく知る女といえば、王宮のメイドたちか学園の女生徒の――というところでガンマはやっと気づいた。



(っ!? ぼ、僕のよく知る女の子で、男に好かれている女! それは一人しかいない!)


「まさか、まさか……!?」


「……お気づきになられましたか?」


「お前……お前……!」



ガンマが信じられないような目でローイを見る。一方のローイは顔を歪めて笑みを浮かべる。まるで悪魔のように。



「お前! ミーヤにオルフェ・イーノックを誘惑させようというのか!?」


「その通り!」



ミーヤ。ミーヤ・ウォーム。ガンマとミロアの婚約が白紙になったきっかけになった女性であり、ガンマが想いを寄せている学園の生徒のことだ。



「ふ、ふざけるな! ミーヤに、他の男を誘惑しろというのか! そんなことが許されるはずが、」


「そんなことは関係ありません。ミロア様の婚約をもう一度白紙にするまでは」


「何!?」



ローイは真顔で断言した。ちょっと不気味さを感じさせるほどに。



「確かに、殿下がミーヤ嬢にご執心なのは理解しています。殿下がそんなことを望まないのも承知しています。ですが、よほどの女性でなければ侯爵令息を落とすことなどできません。そういう意味ではミーヤ嬢ほど適任はいません。何しろ、殿下を含めて複数の男を虜にしたのですからね」


「そ、それは………」



また胸に深く刺さる言葉を受けて、ガンマは勢いを失くす。それに畳み掛けるようにローイは語る。



「そもそも、ミーヤ嬢の方は殿下のことを避けているように見えます。殿下に執心されているのに避けるなんてちょっと失礼ではありませんか。そんな女性に遠慮する必要がありますか?」


「………っ」


事実だった。学園が婚約破棄のことで騒がしくなった頃より前、ガンマがミロアを突き飛ばしてからミーヤはガンマから距離を置いたのだ。そんなミーヤの態度にガンマが不満を感じていた。


その不満をローイは見逃さなかったのだ。



「彼女は所詮男爵令嬢にすぎません。王族である殿下が何故彼女のことを考えなければならないのでしょう。いくら殿下に懇意にされていても、本当に殿下といつまでも一緒にいられるはずなどないというのに」


「………」



それは、その言葉は、ガンマにとって何よりも目を背けていた現実だった。

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