第128話 孤立無援
つまり、ローイもその中の一人だというわけだ。
(この顔、どうやら周りがご自身を馬鹿にしているのは分かっていても、どこまで察知されているかまでは考えていなかったのですね。まあ、王太子の座を取り戻すことばかり考えていれば分からないのも当然でしょう)
驚愕する顔になったガンマを見るローイはチャンスだと考える。激しく動揺する今が利用するために付け入るチャンスだと。
「殿下には残念でしょうが、学園にも身近にも殿下の味方はいないと言うことですね」
「……くっ」
「側近さえもそうでしょう。朝の反応を見れば分かります。今この場にもいないのなら尚更……」
「…………」
側近、それはマーク・アモウのことだ。朝の反応とは、ガンマが頼っていたにもかかわらず騒ぎになり始めたところで逃げ出したことだ。その後、マークはガンマに近寄ろうとはしなかった。
(休み時間になるたびに周囲が騒がしくなるから会いに行けなかった……そんな言い訳をするかもしれないが、仮にも王族の側近がそんなことでは成り立たない。ですが、ガンマ殿下ではそれでも言いくるめられるでしょう)
「マークは殿下を見捨てたのまぎれもない事実。朝の後は自分から会いに行く素振りすら見せなかったようでしょうし、これはもうマークは信用も信頼もできないのは間違いないでしょう」
「……そうか」
側近も信じるべきではない。それはガンマも同じことを思っていた。元々頼りにしていたわけではないが、今日の出来事があって全く信じられなくなったのは事実だ。それにローイの言う通り、朝の後は会いに来てもいない。
「そして、これからも殿下に味方してくれる者はいないでしょう。側近も取り巻きも離れ、あんなに執心していた男爵令嬢も学園を休学中。王族なのに孤立無援。このままでは殿下の将来は誰もそばにいてはくれないでしょう。しかも、その元凶は貴方ご自身」
「そ、それなら! どうすればいいんだよ! ぼ、僕は、一体何をどうすれば良かったんだ!? これから何をすればいいんだよ!?」
信じる者はいない。頼れる者もいない。状況は悪い方向に行くばかり。そんな厳しい現実を突きつけられたガンマはもうヤケクソになって叫んだ。涙こそ流さなかったが、涙が出そうな悲痛な顔になっていた。
そんなガンマの様子を間近で眺めるローイは、必死で笑うのを堪える。あまりにも都合のいい状況になるのが早すぎたのだ。
(思ったよりも早い段階で自棄を起こしてくれましたね。後はここからが重要になるのです)
「殿下、そこでこの元側近だったローイから良い提案があるのですが……聞きますか?」
「いい提案! なんだそれは!?」
ガンマが目を見開いてローイの言葉に食いつた。すでに冷静な判断力を失っているようだった。
「殿下……僕達、手を組みましょう。互いの利害が一致していますから」




