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第126話 王子と元側近

学園では放課後になっても公爵令嬢とその婚約者に関する話題で騒ぎが止むことはなかった。この日の朝がそれだけ衝撃過ぎたからだ。王族の口から公爵令嬢が侯爵令息と婚約したと聞けば、話題にならないはずがない。何しろ、その公爵令嬢が元王太子の元婚約者なのだから。



「くそ! どいつもこいつも馬鹿にしやがって!」



そんな騒ぎの元凶であるガンマは悪態をついていた。生徒たちが帰った教室で、椅子を蹴り飛ばすような幼稚な行動を人に見られようとも構わないくらいに苛立っていた。



「僕は、ミロアとオルフェ・イーノックが婚約したとしか言っていないのに! なんで僕が『遂に見放された』とか『寝取られた』とか『逃げられた』とか言われなきゃいけないんだよ! どいつもこいつも僕を笑いものにしやがって、王族を何だと思ってるんだ!」


「………貴方の自業自得ではありませんか。ガンマ殿下」


「何だと!?」


「時と場所を考えて行動すべきだと何度も言ったではありませんか。僕の忠言を頭に入れていないからこんなことになるのですよ……!」



放課後の教室に残っているのはガンマだけではない。ガンマの側近……ではない男が椅子に座りながら冷たい眼差しでガンマを睨んでいた。



「朝っぱらから、大勢の生徒の前で、あんな傲慢な態度で、ミロア様とオルフェ・イーノックが婚約したと叫べば衝撃的な印象を与えますよ。殿下の態度を見れば、貴方に対して悪い印象も抱きます。それはそれは面白おかしく貴方を悪者というか笑い者にしますよ………」


「な、な、なん………!」


「言っておきますが、僕に当たらないでくださいよ。僕はミロア様のことしか関心ないし、貴方の側近でもないし」



学園の話題の中心はミロアとオルフェだが、中にはガンマたちに悪い意味で注目するものも多い。何故なら、ミロアに、レトスノム家に婚約破棄されたガンマの立場が悪いことはすでに知れ渡っているからだ。そんな状況で、元婚約者が他の男と婚約したと聞けば、『ガンマに問題がある』と思うだろう。更に、ガンマに悪感情を抱く者達からすれば、いい機会なので変に邪推したり面白おかしく曲解した話を持ち上げることもありうる。ガンマ本人の口から聞いたのなら尚更だ。



それが元側近ローイ・ミュドの見解だった。



「そもそも、朝学園であんなことを叫んで何がしたいのですか?」


「お、オルフェ・イーノックとやらに命じるつもりだったんだ。ミロアをよこせって……」


「王太子でなくなった貴方が? 何故?」


「婚約を白紙にしてもらって……ミロアに、もう一度僕と婚約してもらおうと……」


「…………」



ガンマの思惑を直接本人から聞いたローイは、特に何も思うことはなかった。仮にも王子と元側近というだけあって、ガンマの思考くらいはだいたい察していたのだ。王族の立場を笠に着て、オルフェから無理やりミロアを奪おうとしていたのだろうと、冷静になって考えればすぐに分かる。


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