第124話 二人の共通点
学園が大騒ぎする中で、騒ぎの話題を気にしつつも別のことを優先して気にかける令嬢が二人いた。
(あのミロア・レトスノムとオルフェ・イーノックが婚約!? イーノック家が私との婚約を蹴った理由が本当にそのためだったなんて……)
(公爵令嬢と侯爵令息が婚約……そんなのは伯爵令嬢がつけ入れるすきなんてないよね……)
レイダ・ブラッドとアギア・ファング。二人共伯爵令嬢であるが立場が大きく異なる。ブラッド家は由緒正しい伯爵家で歴史が長い。それに対してファング家は最近になって伯爵になった成り上がり。レイダとアギアを比較すると、知るものが見ればレイダのほうが格上と判断するものが多いだろう。そしてそれは本人たちも同じだ。
しかし、この二人にも共通することがいくつかある。本人たちにとっては不本意かもしれないが、知る者は実は結構いるのだ。レイダもアギアも王太子の側近の婚約者であり、そして婚約解消している。しかも、婚約解消の根本的な理由は一人の男爵令嬢のせいだということだ。伯爵家の身の上としては男爵令嬢がきっかけで婚約が白紙になっては屈辱的のことだ。今も婚約者がいないことまで多くの第三者が知っている。
だが、第三者はおろか本人たちですら知らない共通点もあった。それはオルフェ・イーノックのことだ。
レイダもアギアも、正確には彼女達の両親がオルフェ・イーノックに婚約の打診を求めていたのだ。結果的にはイーノック家に断られたが、断られた結果に関しては二人共気にしていなかった。
(イーノック家の令息との婚約はできなかった……それはいいんだけど、ミロア・レトスノムと婚約したのはどうしても気になるわね)
(ミロア様のことはあまり良く知らないけど、ガンマ殿下が好きだったのにそうじゃなくなって婚約破棄したって聞いてる……そんな人が婚約破棄して数日で侯爵令息と婚約……雲の上の人だけど、気になる……)
そんな二人でも、自分を振った男が公爵令嬢と婚約したから気になり始めてしまった。特に、あのミロア・レトスノムとの婚約なのだから興味がわかずにはいられない。婚約者に婚約破棄を突きつけたと聞いて、それができなかった身としては二人共ミロアには思うところがあるのだ。
それだけに気まずい。
(無能王子への思いが失せた公爵令嬢……彼女がこの私から声をかけて、どう答えるかが重要だと思ったけど……これはイーノックの令息のことを考えると気まずくなりそう)
(ミロア様のお気持ちを知ってみたいって思うけど立場が……それ以前に婚約した令息のことを考えると、二人の邪魔になるよね……)
ミロアの婚約者と間接的に関わろうとした。それも婚約の打診という形で。断られたとしても気まずくなるのではと思ってしまう。何しろ、二人共人付き合いというものが不得意なのだ。そんなところも共通してしまっていた。




