第122.3話 害虫
(元側近視点)
「ま、まてまて。ま、まずはオルフェ・イーノックに事情を聞こうじゃないか? あいつが僕達の知らぬところでミロアと婚約しやがったんだからさ……な?」
「…………」
オルフェ・イーノック、あの忌まわしい男の名を口にして優先順位を考え直しました。確かに、こんな馬鹿王子よりもあの男を殺してでもどうにかしなければならなかったのです。とりあえず恐怖で顔を引き攣らせる男を離して、詳しい話を聞くことにしました。
◇
「――ということがレトスノム公爵から父上に伝わったんだ」
「……なんということを!」
僕は、全てを知りました。欲にまみれた上級貴族の陰謀を!
「まさか、ミロア様の父親がそんな非道な男だったとは!」
「へ?」
「己の利権のためだけに、ミロア様を再び道具として婚約させるなんて! 己の娘を駒にする非人道主義者め!」
「ええ!?」
レトスノム公爵……幼かったミロア様を無理やり王族の婚約者にした悪徳貴族。それが事もあろうに今度は対して特出するものがない侯爵令息と婚約させるだなんて!
「許せない……オルフェ・イーノックもレトスノム公爵も! ミロア様の人生を弄びやがって!」
「…………」
「ガンマ殿下!」
「はい!?」
「オルフェ・イーノックという害虫を叩き出しますよ! すぐに探し出しましょう!」
「あ、ああ……」
ミロア様を救い出すためにも害虫を駆除しなければならない。まずは、不相応な分際でミロア様の婚約者になった不届き者を成敗する。この馬鹿王子を利用してでもミロア様の人生を蝕む害虫共を滅ぼしてくれる!
……だが、先手を打たれていたようです。教師の方から、オルフェ・イーノックが婚約を理由に休学している事が判明しました。
「いち早く逃げたのか! なんてずる賢い男なんだ!」
幼馴染という立場に長くいすぎたのか、恐ろしくミロア様に付きまとう男め!
◇
(元王太子視点)
……くそ。マークのやつは上手く逃げ切れたようだ。どうしてこの僕がローイに言われて一人の男を探し出さなきゃいけないんだよ。おかげで授業に出遅れて教師の印象まで悪くなる……。
「もうヤダ……なんでこんなことに……」
学園という閉鎖的な場所だから父上にバレる可能性は低かったけど、あんなに行動的になったローイの存在を考えると……ああ、想像したくもない!
「何なんだよ……僕の側近共は……」
グロンもマークもローイも、結局自分のことしか考えていないじゃないか。どうして僕の側近にこんな奴らが選ばれるんだよ。親のコネでなった側近なんて害虫みたいなもんじゃないか。
……もしかしたら、僕がミロアとの関係が上手くいかなかったのも、王太子の座が失われたのも、全てあいつらのせいなのでは……そう思えてきた。




