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第122話 侯爵親子

レトスノム公爵家が和やかな時間を過ごす一方で、イーノック侯爵家では全く逆の状況にあった。



「父上……」


「……」



イーノックの親子の間に緊迫した雰囲気が流れていた。オルフェがとある事実を知って、そのことで父オルペウスに怒ったのだ。



「父上……もう一度お聞きします。何故黙っていたのですか?」


「何度も言わせるな。忘れておったのだよ」


「惚けないでくださいよ! 忘れたで言い訳になりません! 俺宛にブラッド家とファング家から婚約の打診の手紙が届いていたのに俺に見せなかったのでしょう! しかも、俺に黙って父上が勝手に断る内容の手紙を送った、違いますか!?」


「…………」



オルフェはブラッド家とファング家から婚約の打診の手紙が来ていたのだが、そのことを知らされていなかった。その事実を知ってオルペウスを咎めることになったのだ。



「……ふっ、気弱な青年のままかと思ったがミロア嬢と婚約することに……いや、彼女と最近関わるようになってから強気な面が出始めたな」


「認めるんですね?」


「ああ、大体お前の言うとおりだ」



オルペウスは認めた。そして、さっきまで仏頂面だった顔から笑みが浮かんだ。その笑みは決して嘲るようなものではなく、どこか温かいものがあった。



「何を笑ってるんです。馬鹿にしてるんですか?」


「逆だ。やっとお前が私に強気に出れるようになって嬉しいのさ。少し前のお前なら何も言わないか言っても怒りを見せはしなかった。そうだろ?」


「……そんなこと……」


「いや、そうだ。だが、今は違うと言える。そうなったのもミロア嬢のおかげだと私は思っている。やはり私の目に狂いはなかった。ミロア嬢を婚約させられてよかったよ」


「……俺がミロアと婚約するまでギリギリ待っていてくれたのですか? 親として俺のことを尊重して、いや貴族として有利な方を選んでいたのですか?」



オルペウスの言葉の意味くらいオルフェは理解できる。ただ、どのように解釈するかはオルフェ次第だ。婚約のことで悩むのは貴族として当然のことだ。実際、オルフェも悩んだこともある。



「強いて言うなら全部だ。お前の言ったこと全部。親心もあるし貴族としての価値観もあるし、私個人バーグ殿と長い付き合いを持ち続けたいという気持ち全部だ。別にたった一つの思惑だけじゃない。貴族と言ってもどうしても個人的な思惑も残るものさ」


「父上……?」


「ふっ、流石にその辺りはお前には早いか。だが、これだけは言っておく。私達貴族というものは多くのものを背負い続けて悩み選択するんだ。その中の何かを切り捨てるのも大事にするのも悩んだ末の選択で決まる。良くも悪くもな」


「それは……」



よく分からないと思いかけたオルフェだったが、一瞬ミロアとガンマの顔が思い浮かんだ。何故、この二人が思い浮かんだかは分からないが、どこか納得もしている自分がいた。



「まあ、確かにお前に言わなかったのは流石にいい選択ではなかったかもな。そこは素直に謝罪しようじゃないか」


「素直なら最初から白状したでしょう……」



イーノック親子はとりあえず仲直り(?)することになった。


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