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第118話 縁つなぎ

イーノック家の屋敷では、冷静になって頭が追いついたオルフェが乾いた笑みをこぼしていた。



「は、はは……こ、この俺が、ミロアの婚約者に……!」



そして、すぐに興奮してきた。オルフェの心は歓喜に満ちていったのだ。



「や、やった! お、俺なんかが、俺なんかが! ミロアと婚約したんだ! うおおおおおおおっ!」



喜びのあまり飛び上がったり奇声まで叫んだりと派手に興奮するオルフェ。それも仕方がないことだ。ずっと思い続けた幼馴染、一時は悪い成長をしたために距離を置かざるを得なかったが、豹変したと言ってもいいほど良い方向に変わってより美しくなったミロアとの婚約だ。嬉しくて大興奮するのも無理はないと目の前にいる父オルペウスは思う。


 

「落ち着けオルフェ……といっても無理か。今は思う存分に興奮させて放って置くしかあるまい」



オルペウスは笑って自身の書斎に戻っていった。オルフェとの細かい話は落ち着いた後でもいいだろうと判断したのだ。そもそも、今のオルフェの喜びようは激しいと言える。今すぐに細かいことを話すのは無粋と感じたのだ。



「……くくく、まさか本当にレトスノム家と縁つなぎになるとは。オルフェをミロア嬢の幼馴染……遊び相手に送って良かったものだ。レトスノム家に情をかけてもらうための保険がここまで我が家に利をくれるとは思わなかった」



オルペウスは過去を思い出す。それは、ミロアとオルペウスが幼馴染になったきっかけだった。



(当時は、我が子を愛していても子育てをよくわかっていなかったバーグ殿はたいそう困っていた。娘に友達ができないと……。酒の席でたまたまそんな言葉を聞いてしまった私は、これは絶好の機会ではと思い切って『我が息子を遊び相手にどうでしょう?』と言った。それを真に受けたバーグ殿は少々戸惑いながらも受け入れてくれたのがきっかけだったな……今思えば、よくそんな下心がありそうな提案を受け入れてくれたものだ……)



酒の席。それは我が子の教育などに悩む上級貴族達が国王の提案で非公式に集まって、非公式な宴をしながらわが子のことで語り合うものだった。国王としてそんな宴はどうかと思うが、当時の国王も息子のことで悩んでいたのだ。



(……あの宴は結局、上手くいったかどうかは怪しいものだ。非公式なのをいいことに強い酒を出したことが災いして、ほとんどの者が酔いつぶれてまともな話し合いなど……いや、私とバーグ殿は上手くいったと言えるかもしれんな。おかげで将来は安泰……いや、学園の状況にもよるか)



将来は安泰だと思うのは早い。オルペウスも学園にはミロアとオルフェの敵がいることは知っているのだ。息子のためにもオルペウスは忙しく動かなくてはならない。



「まずは、ブラッド家とファング家からの婚約の打診を断る手紙を出すか。レトスノム家の令嬢と婚約したからと伝えれば納得もするだろう。上手くいけば学園にも話が広まるからな」



オルペウスは最高級の封筒と便箋を用意して手紙を書き始めた。

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