第113.2話 え? どういうことだ?
(侯爵令息視点)
え? どういうことだ? どうして我がイーノック家の屋敷にレトスノム家の馬車が近づいているんだ? 今日、何か重要な約束をしていたのだろうか? 父のもとに報告してみると、父上は何やら難しい顔になった。
「う~む、今日はバーグ殿と何も約束をしておらんのだが……」
「しかし、レトスノム家の馬車が来ているのですよ?」
「おそらくだが、お前の手紙の内容を鑑みて急遽こちらに来たのだろうな」
「え? 俺の手紙?」
俺がミロアに宛てた手紙。その内容は父オルペウスも把握している。その手紙のことで何か重要ななにかがあったのだろうか? レトスノム家が事前連絡もしないほどに?
「ミュド家の若造がミロア嬢にという内容だろう? バーグ殿のことだ。昔のことを思い返して先手を打ってやろうとでも考えたのだろう。よほどミュド家を警戒しているのかミロア嬢に過保護になっているのか、その両方か……」
「昔のこと? 一体どういう……」
「それは後でお前にも教えてやる。今はレトスノム家の出迎えが先だぞ。もしかしたらだが、お前の夢も叶うかもしれんのだからな」
父上は大急ぎで使用人たちにレトスノム家の馬車を迎える準備を命じはじめた。
「え? どういうことだ?」
訳が分からなかった俺だが、その場で立ち尽くすわけにもいかず父のように忙しく動き出した。
◇
え? どういうことだ? どうしてバーグ・レトスノム公爵とミロアが我が家にやってくるんだ!? 事前連絡もなしにこの二人が来るなんて一体何があったんだ!?
「これはこれはバーグ殿、よくぞ我が家にお越しいただきました」
「いいえ、事前連絡もなしに訪問するなどという無礼を許してもらい感謝します」
「最大限のおもてなしをご用意したいところですが……よほどの事情がお有りのようですね。まずは話を聞かなければならないのでしょう?」
「流石に話が早い。貴殿ならば私の意図をすでに理解されていると存じますが……」
「勿論です。最終的には若い二人の決断に委ねることになりましょうが……」
……え? どういうことだ? 何故、公爵と父上が俺とミロアを交互に見るんだ? 俺、手紙に余計なこと書いたっけ?
◇
え? どういうことだ? 俺とミロアの婚約の話し合いだったって!?
「ミロア嬢に急遽婚約者が必要になったものだから、彼女が望ましい相手といえばオルフェしかいないということで我が家に来てくださったわけだ。よかったなオルフェ、お前の夢は叶うようだ」
詳しいことはまた後でと言われたが、一体何がどうやってそういうことに!? いや嬉しいんだけど心の準備がまだできてないんだよ! こういう時は一体どう言えばいいんだ!?
◇
「オルフェ、不束者ですがこれからは婚約者として、未来の伴侶としてお願いしますね」
……え? どういうことだ? いつの間にか俺とミロアの婚約が確約されていた。……どうしよう。もう何も覚えていないんだけど……?




