第105話 友達作り
学園。その役割は生徒達に対する教育制度の中核的な存在。主に勉学と社会と道徳などを学ぶための機関であるとされる。勉学で頭を鍛え知識を蓄え、様々な活動に取り組むことで社会性を学び、他社と触れ合うことで愛や友情といった道徳を学ぶ。それが学園生活における『普通』、ミロアはそんなふうに整理した。
「……まずは、友だちを作って一緒にご飯を食べたり、宿題したり課題をこなしたり……」
「それは婚約者のオルフェ様とご一緒になされることでしょう。課題に関しては必ずしも婚約者だけとは限りませんが……そもそも、お嬢様に友達を作るということは一番難題では?」
「うっ……」
エイルの言う通りだ。オルフェ以外に友と呼べるものがいない現時点で、新たに友達を作るというのは困難の極みだった。
(っていうか友達はもういいかなって思ってたのよね。でもそれだと普通にできないっていうかオルフェやエイルが心配するだろうし……どうしよう?)
最初は友達作りは諦めるつもりだったミロアだったが、エイルやソティーと積極的に会話するようになったり、オルフェと再び交流するようになって、考えが変わってきたのだ。人と関わることは面倒な時もあれば楽しい時もあるのだと思えるようになった。
(学園で寂しく過ごすのは嫌だし……どうしたものかしら)
「お嬢様、学園での生活を一新するには多くの生徒にお嬢様の印象を変えさせる必要があると思います」
「印象を変える?」
「まずは、今のお嬢様のお姿で登校なさって大人しく静かにしているだけで周りの生徒の印象は大きく変わるでしょう。特にガンマ殿下のことは避けて、婚約者になるであろうオルフェ様と適切な距離を保つのです。それだけで『ガンマ殿下の婚約者』だったお嬢様の印象は確実に以前と違うものになるはずです」
「……全くそのとおりよね」
つまり、『ガンマの婚約者』から『オルフェの婚約者』に変わったことを印象付けるということだ。そして、性格も大人しく慎ましいものへと変化したことも周知の事実にする。友達作りはそこからだ。
「まあ、あの頃の私は他者を寄せ付けないって感じだったし……それが緩むどころか全く逆になってしまえば……」
「大人しい感じの令嬢やおっとりした令嬢と仲良くなれるでしょう。もしくは、ミーヤ・ウォームの被害者仲間とならば良き話し相手からなれるかもしれませんね」
「え? 被害者仲間? 誰それ?」
「ガンマ殿下の側近の二人、彼らの元婚約者のことです。ただ、そのうち一人はいなくなりましたが、元婚約者だった令嬢方はまだ学園で普通に過ごしています。婚約が白紙になった理由はもちろん……」
「そういうことね……」
マーク・アモウとグロン・ギンベスには婚約者がいた。だが、彼らがミーヤ・ウォームに執心したことが原因で婚約は白紙となった。被害者仲間とはその元婚約者たちのことだ。




