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第12.5話 娘の婚約者

(公爵視点)



私の部屋を出ていくミロアはもう十分体が良くなったようだ。しかし、だからといって無理は禁物だ。もっと屋敷で療養すべきだろう。



それに、精神的にはまだ辛いかもしれんしな。あの忌まわしい王太子に傷つけられた痛みはきっと大きなもののはずだ。ミロアが療養している間に婚約を無効にせねばならん。



……思い出すだけでも忌々しいな王太子にして第一王子ガンマ。あの男が王宮で私を見て最初に口にしたこと、あまりにも酷すぎる。



『公爵! 貴方の娘はどうなっているんだ! 僕の気を引きたくていまだに学園に戻ってこないとは頭悪すぎるんじゃないのか! そんなんで次期王太子妃が務まるとでも思っているのか! 娘の我儘を叶え続けるのは親としてどうなんだ!』



……腹立たしい。どこかの誰かさんが暴言を吐いて突き飛ばしたせいだと思わないのか? ミロアに口止めされているから言えないのだが、愚かな婚約者のせいで大変なことになったんだぞ……!



だからこそ、婚約解消を陛下に切り出した時は止めに入るとは思わなかったな。



『こ、公爵! 僕とミロアの婚約は王家と公爵家の間で決めたことじゃないか! それを覆すようなことがあれば僕は王太子から……じゃなくて、王家と公爵家の威信に関わるぞ!』



そんなことを言い出すものだから、ミロアを突き飛ばしたことを言ってやれば顔を青くするとはな。



『ち、違う! ミロアを突き飛ばしたのは決して暴力が目的じゃないんだ! あ、いや、僕は突き飛ばしたんじゃない! ……そうだ、あの時ミロアが強引に抱きつこうとするから避けただけで、避けられたミロアがその拍子に床に転んだだけなんだ! それが第三者から突き飛ばしたように見えただけで……っていうか、ミロアが大げさに公爵に伝えただけであって――』



そして、例の男爵令嬢のことを切り出してみれば顔を真っ赤に変えて怒りをあらわにするしまつ。



『ミーヤのことは関係ない! 彼女は親しい友人だ! ミロアが一方的に嫉妬しているだけなんだ! くそ、あの女! 互いの親を巻き込んでくるとは何ということをするんだ! ふざけやがって! だからあの女は……』



見苦しいことだった。仮にも国を背負うという立場の者とは思えぬ暴言と子供じみた姿。こんな男をミロアの婚約者にしていた自分が情けないとも思った。



それは国王陛下も同じ思いだったはずだろう。顔に手を当てて俯き悩む陛下の姿を見れば分かる。しかし、陛下はガンマ殿下の見苦しい姿を見ながらも、私の予想通りの言葉を口にしてしまう。



『レトスノム公爵。些細なことで王家と公爵家で決めた婚約を解消するわけにはいかぬ。我ら王家の方でも学園の状況を調べるゆえ、どうか婚約解消の件は待ってほしい。願わくば婚約は続行の形を維持していくように考え直してほしい』



王家の側からすればそうだろう。大きな後ろ盾は失いたくないはずだ。そのパイプ役が我が子であるなら尚更だろう。理解はできる。



それでもガンマ王子は駄目だろうな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで拗れたら、後ろ盾にはならん。 と判断するのが普通じゃないかなぁ。 まあ、実情を知らん他の貴族や国外へは、名ばかりの後ろ盾としては機能しそうですけど。
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