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第94話 甘さと非常さ

そんな中で精神面の向上などあり得るだろうか。



(私が休学したり婚約破棄したりしたせいで、ガンマ殿下達はミーヤ・ウォームに構っていられなくなった……そして互いに孤立して……メンタルが強くなるはずもないか……)



ヒロインのメンタルは弱かった。しかも、その原因は自分にあった。ミロアはそのことに少し罪悪感を抱く。ガンマ殿下が王太子から外れた遠因は自分なのだから。



(道理で誰かとくっつかないわけだわ。これだと彼女が私みたいな転生者の可能性は低いわね。ごめんねヒロインちゃん)


「休学する直前は憔悴している様子だったようで……落ち着いた頃に戻ってくることでしょう」


「つまり、私が騒動が収めればいいわけね。そうなるとますます学園で婚約者がいますと知らしめてやる必要があるわね」


「……お嬢様、ご自分のためですよね?」


「? ええ、私自身と家のため、周りのため、国のためよ。もちろん一番に自分のためにだけどね」



ミロアの言葉に偽りはない。確かに学生の身で婚約者を持つことは貴族として間違ってはいない。そして、それは最終的にミロアの言う通り、自分と周りのためになる。


だが、先程の発言は『ミーヤ・ウォームのためにも』という感じに聞こえるとエイルは思ったのだ。



(ガンマ殿下への思いは吹っ切れた様子だが、それでもミーヤ・ウォームには思うところがあるのが普通……しかし、今お嬢様はそんな彼女のことも心配したのか?)



エイルは元『陰』。その立場は戦闘よりも非戦闘のほうに長けている。例えば、人の心情を探ることもその一つだった。今は使用人の仕事がメインだが、時たまに嘗ての技能が役に立つ。だからこそ、ミロアがミーヤ・ウォームにほとんど悪意を抱いていないことや少しばかりの罪悪感を抱いていることに気づいてしまった。



(精神面で逞しい成長をなされるのはいいが、些か優しすぎるのも問題だ。貴族としては甘い考えは……いや、ガンマ殿下に対して嫌悪感をもったことでミーヤ・ウォームに関心が薄れた? どちらにしろ、面倒な者に対して甘い考えを持たれても困るな)



貴族とは、敵も味方も多い存在だとエイルは熟知している。味方に寛容であることは間違いではないが、味方でもないものにまで寛容なのは、どこにいるかも分からない悪意ある者に付け入られる要因になりかねない。甘さと非常さは使い分けるべきなのだ。



(いくら何でも男爵令嬢と関わられてもいいことはあるまい。ましてや、本人はともかく父親があれではな)



エイルは、ミロアにもう少し非情さがあってもいいと思う。だからこそ、話の続きをする合間にそれを教えることにした。


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