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第85話 戦争のきっかけ

王家の隠された事実、それは戦争のきっかけが一人の貴族令嬢を害された事による怒りと憎しみからくるものだったことだ。国の利益ではなく、王家の私情がきっかけだったとも言える。



「御令嬢を害した狼藉者を徹底的に探し続けた王家は、犯人を捕らえ犯行動機を知り憤りました。その中でも国王となる兄の怒りは激しかったとのこと。御令嬢の妹も同様だったとも聞いています」


「……陰謀を目論んでいたのは隣国の方だったのね」


「はい、お嬢様の想像したような身内のいざこざはなかったと思われます」


「…………」



身内のいざこざはなかったと言われて、ミロアはまた恥ずかしくなった。先走って口に出してしまったこともそうだが、それ以上にろくでもない想像を働かせてしまったことを忘れたい。



(……これも前世の知識の弊害……ああもう、振り回されないように気をつけようと思っていたのに!)



前世の知識に振り回される自分に自己嫌悪するミロアだが、そんなことを気にしている場合ではない。まだ、エイルの口から語られる歴史の闇はまだ続くのだ。



「隣国の計画のせいで公爵令嬢が傷つけられたことに憤ったのはその二人だけではありませんでした。国のメンツが害されたということで戦争に賛成する方々も多かったとか」


「そんな中でどうして弟と御令嬢……王弟とその妻が反対したの? 心情としては一番許せないと思っているんじゃないの?」


「王弟夫妻は国の、国民のことを第一に考えたそうです。戦争は国民達のためにならないと」


「……!」


「当時の隣国は我が国より少し国力が上なのです。それは今も変わっていません。そもそも戦争をしたところで得られるものはなかったと言ってもいいのです。それでも当時の国王と王妃、それにメンツを気にした方々は戦争を起こそうと躍起になりました。その考え方に王弟夫妻は駄目だと言ったのです」


(国のメンツ。それは王家のプライドだ。プライドを傷つけられた貴族が報復することは当たり前、それが国単位ともなれば戦争を起こすのも必然ということね。それでも王弟と御令嬢は国の民のことを優先した……)



ミロアも一貴族であるからプライドを傷つけられる怒りは理解できる。そういう意味では当時の国王の行動は仕方がないのかも知れない。


ただ、国民のために戦争反対だという当時の王弟夫妻の言い分も分かる。国の財産は国民だ。彼らに負担をかけるような戦争などミロアも簡単に首を縦に振れるかどうかわからない。



「最初は王弟も戦争を起こすことに賛成しかけたそうですが、肝心の御令嬢に戦争は望まないと強く言われたことで反対派になったそうです。それが王弟の王家からの追放に繋がったのです」


「つまり、王家の兄と弟、某公爵家の姉と妹で考え方の違いで対立したと……なんとも悲しいな話ね」



血の繋がったもの同士で対立する。ミロアは前世の小説でもそんな内容の話が読んだことがあるが、実際にあった出来事として耳で聞くと非常に重く感じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国力上の相手に開戦は行き過ぎですね。 民のため云々以前に、結果として誰も得しないから。 こういう場合、証拠揃えて相手側に突き付けて巨額の賠償請求するしかない。 隣国なら貿易に関する条約を有利…
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