神魔大戦 交流編①
魔界から帰った翌日、学校が休みだったので、俺は朝からゲートにいた。二つの世界に行き、今まで経験したことのないことや話を聞いて、俺は好奇心を抑えられずにいた。扉に触れる時、今日はどっちの世界に行くのだろうと考えていた。そして扉に触れると、中に引きずり込まれた。
目を開けると、見覚えのある風景。辺りは明るく、木々や草花が生い茂っている。空を見渡すとたくさんの島々が宙に浮いている。
「今日は神界か」
俺は心が躍っていた。今日は時間もたっぷりある。どこを探検しようか考えるだけでも楽しくなる。一人で探検していると、この前アテナ様と出会った場所に着いた。風が吹いてとても心地よかったので、俺はその場に大の字になって寝ころんだ。澄んだ空気を吸いながら、目を瞑り、この前のことを考えていると、ふとアテナ様の声が聞こえた気がした。
「けーんーしーくん」
目を開けると、目の前にはアテナ様の姿があった。
「ア、アテナ様!」
俺は驚いて飛び起きた。
「どうしてここに!?」
「それはこっちのセリフだよ!どうして剣志くんがここに…神界にいるの!?」
「そ、それは…」
まずい、こんなに早く見つかるとは思っていなかったので、来た理由を考えるのを忘れていた。
「もしかして、今度は自分から来たの?」
「え!」
アテナ様の鋭い質問に俺の頭はついていけず、思考停止状態になっていた。
もうここまで来たのならしょうがないと思い俺は正直に話すことにした。
「実は、この前来た時から神界のことが頭から離れなくなって、また来たいって思ったんだ。もっといろんなことを知りたいし、いろんなところに行きたいって思って…」
「ふーん、そうなんだー」
アテナ様は俺の話を聞いてくれていたが、これは俺のエゴだ。神界にも神界のルールがある。しかも姫という立場の御方。アテナ様がどう判断しようと俺は従う覚悟をした。
「じゃあ、私と一緒に回りましょ!」
アテナ様は笑顔で俺に手を差し伸べてくれた。
「え!いいんですか?」
「ん?何が?」
「また勝手に神界に来てしまって…しかも今回は自分から来たのに。」
「不法入国…を気にしてるの?」
「うっ」
はっきりと言葉にされると物凄く悪いことをしてるように感じて俺は気分が悪くなった。
「大丈夫だよ!」
アテナ様はあっさりと言ってくれた。
「私ね、もしかしたら剣志くんがまた来てくれるんじゃないかなって思ってたの。だからあの場所に行ったんだ。そしたら本当にいるんだもん!ビックリしたけど、嬉しかったなぁ。もし剣志くんを悪く言う人がいたら、私が守ってあげるね」
アテナ様の言葉を聞いて、俺の不安はどこかへ消えていった。
それから俺はアテナ様に神界を案内してもらった。神界にしかいないという魚を食べたり、島々の移動には空飛ぶ船に乗ったり、今まで経験したことのないことをいっぱい教えてくれた。
アテナ様と神界を散策していると、見慣れた顔の神族がこっちに向かって来た。
「アテナ様!こちらにいらしたのですか!ってお前は!?」
テセウスさんが俺を見て驚いた。
「こんにちは。テセウスさん」
「あぁ、こんにちは。じゃなくてどうしてお前がここにいる!?」
「それは…」
俺が言おうとした時、遮るようにアテナ様が言った。
「私が呼んだの」
俺とテセウスさんは驚いた表情でアテナ様を見た。
「姫様が!こいつを!?」
「こいつじゃなくて、剣志くんね!」
「すっすみません」
少し強い口調のアテナ様にテセウスさんがたじろぐ。
「剣志でいいですよ」
俺はなんだか申し訳なく思い、口を挟んだ。
「すまない。剣志」
「いえ。気にしないでください」
「で!テセウスは私に何の用なの?」
「いえ、ご用というわけでは…。ただ、今は魔界との戦争中です。またいつこの前のような襲撃に遭うかわかりません。姫様の護衛が私の仕事ですので」
「もう、いつもそうやって付きっきりだと休みたくても休めないの。私も一人で外出したい時だってあるの」
「しかし…」
その時アテナ様が俺の腕を掴んで引き寄せた。
「それに、今日は剣志くんが私を守ってくれるから大丈夫だよ。この前だって守ってくれたし」
俺はその行動に混乱していたが、テセウスさんの表情は明らかにヤバかった。俺を殺すんじゃないかという視線を送って来る。
「剣志が強いことは承知しています。しかし、それも人族にしては…です。上級魔法を使う魔族に襲われたらさすがに対抗できないでしょう」
それを聞いて俺は少しムッとした。
「そんなことないよ!剣志くんは強いの。もしかしたらテセウスより強いかも」
「それは言い過ぎです。私は神族部隊三番隊隊長!人族に負けるようでは務まりません」
「だったら…」
俺は我慢できず口を挟んだ。
「だったら、俺と勝負してくれませんか?テセウスさん」
二人が驚いた様子で俺を見た。
「何を言っている。俺にはそんな暇…」
「いいね!面白そう!」
テセウスさんは乗り気じゃなかったが、アテナ様が後押しをしてくれた。
「ひっ姫様!」
「いいじゃん。勝負しても。あっ、それともテセウスは負けるのが怖いの?」
「そんな煽りには乗りません。ですが、姫様が見たいとおっしゃるのなら、その勝負受けます」
広場に場所を移動して、俺とテセウスさんの勝負が始まる。
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次回もお楽しみに。