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黛剣志と三世界の姫君  作者: たか
2/7

神魔大戦 神界編①

心地よい鼻歌が聴こえてきたので、ゆっくりと目を開けると、目の前にはかわいい女の子の顔が見えた。とても心地がよかったので、もう一度眠りそうになってしまったがなんとか堪えた。

「あっ!目が覚めた?」

女の子が聞いてきた。

改めて自分の状況を確認すると、俺は女の子の膝の上に頭を乗せて横になっていた。

「うわっ!ご、ごめん」

俺は、咄嗟に立ち上がって離れた。

「ううん。大丈夫だよ。それよりもあなたこそ大丈夫?」

「えっ!俺?」

「うん。散歩してたら、あなたが倒れているのが見えたから!ケガをしているようには見えなかったから、目が覚めるまで待ってようと思ったの」

「そうなんだ。うん、大丈夫!全然動ける。ありがとう」

俺は、手足を動かしたり、ジャンプしたりしてアピールしながら自分の体を確認した。

「そっか。良かった」

女の子は笑顔で答えてくれた。


「それにしても、あなたはどうしてこんなところで寝ていたの?」

女の子が聞いた。

「えっと、そうだな」

俺は、どうしてここで寝ていたのかを思い出そうと記憶を遡ってみた。

「確か…補修を終えて、帰っている時に…、扉が気になって…、近づいてみたら」

その時、俺は、はっと思い出した。

「そうだ!扉に触れた瞬間中に引き込まれたんだ!」

彼女は、その言葉を聞いて、何かを確信したような表情になった。

「そうなんだぁ。じゃあやっぱりあなたって人族なんだね!」

「えっ!」

俺はそう言われて一瞬思考が停止した。

「ちょっとまって、じゃあ君は?」

混乱した頭を落ち着かせようと、俺は彼女に質問した。

「あっ!そうだったね。自己紹介がまだだったね。私は、アテナ。神族なの。そしてここは神界だよ!」

「えーーーーーー!」

俺は、驚きを隠せずに大声で叫んでしまった。

「でも、変だなー。ゲートは封印されてるはずだけど…。あなた何か変なことした?」

「えっ!いや、俺は特に何もしてないけど…」

「ふーん、そうなんだ。もしかしたら封印が弱まっているのかもしれないね」

俺は内心わからないことだらけだが、彼女は自身の中で解決した様子だった。


「ねぇ!それよりもあなたの名前は?」

彼女が唐突に話題を変えてきた。

「あぁ、そうだった!俺も自己紹介してなかったね。俺は黛剣志。人間界に住んでいる。よろしく」

「まゆずみ…けんし」

俺の名前を聞いて、彼女は何か考え事をしている様子だった。


それから俺は人間界のこと、アテナさんは神界のことをそれぞれの身の上話をした。

「でね、私がその時…」

アテナさんが話していたその時、彼女の背後から光の矢が飛んできた。俺は咄嗟に手を出し、矢を掴んだ。もし気づかなかったら、その矢は彼女の頭を射抜いていた。

「チッ、はずしたか」

微かだが声が聞こえた。それに周りに集中してみると人の気配を感じる。二人、いや、三人いる。

「いるのはわかっている。こそこそしてないで出てきたらどうだ」

俺は大きめの声で警告したが、反応はなかった。

次に瞬間、四方八方から光の矢が飛んできた。

俺はアテナさんを守りながら、矢を振り払う。だけどこのまま防戦一方だと埒が明かない。俺は足元に落ちている石を拾って、矢が飛んでくる方向にほぼ同時に投げた。上手く的中し一人撃破。残りは二人。飛んでくる矢の数が減って対応がしやすくなり、二人目も石で撃破。

最後の一人になると姿を現した。

「お前、結構やるな。神力も使わずに生身でそこまで動けるとは!さすがは、姫の守り人だな」

「俺は神族でも守り人でもねぇ。ただの人間だ」

「人…間…?」

俺の言葉を聞いて驚いた様子の賊だった。そして声を張り上げた。

「どうして人間がここにいる!?どうして人間が神族を守る!?」

「そんなの俺の勝手だろ。お前こそ、何でこの子を狙うんだ?」

「はぁー、何も知らない無知か。今、魔界と神界は戦争をしているんだ。魔族である俺が神族を殺すのは当たり前だろう。邪魔をするなら君も殺すよ」

その言葉を聞いて、俺は神界と魔界が戦争してることを改めて理解した。それでも…。

「この子は俺の恩人だ。殺させはしない!」

俺は力強く言った。俺の言葉を聞いて賊はニヤリと笑みを浮かべた。

「じゃあ、一緒に殺してあげる」

そう言って賊は、俺たちに向かって来た。今度は近接戦。賊がパンチやキックを繰り出してくる。俺はそれをかわしながら、カウンターを入れる。

「くっ!」

賊が態勢を崩す。

「今なら見逃してやる。仲間を連れて帰れ」

「なめやがって、ガキが」

賊が魔力を一か所に集中しだした。それを見た俺は嫌な予感がした。

「はっはっは!これで…、ぐふ」

俺が一瞬で近づき、腹に重い一発をくらわすと賊は倒れた。

俺は、倒した三人の賊を木のつるで縛った。


「剣志くん、強いね!」

アテナさんが驚いた表情で言った。

「まぁ、昔から武術を習ってたから、これくらいは」

謙遜しながらも内心は結構嬉しくて、笑顔を我慢できなかった。

「守ってくれて、ありがとう」

アテナさんが笑顔で礼を言った。

その時、遠くの方から声が近づいてくるのがわかった。

「姫様ー、どこですかー、姫様ー」

「あっ、テセウスだ」

アテナさんはその声を聞いて表情が明るくなった。

少しして現れたのは、歳は俺と同じくらいに見える、赤髪でガタイのいい男だった。

「姫様!ご無事ですか?」

「うん、私は全然平気だよ」

「困ります。お一人で勝手に遠くまで行かれるのは。姫様にもしものことがあったらと思うと…」

「ごめんね。心配させちゃって」

「お一人になりたい気持ちもわかりますが、せめて一人くらいは警護を付けていただけると…」

赤髪男がそう言いかけたところで、俺と目が合った。

「それよりこの男は何者ですか?まさか、姫様の命を狙う魔族ですか?」

赤髪男俺に対して警戒態勢に入った。

「違うの。この人は、私を魔族から守ってくれた命の恩人なの」

もう少しでまた戦いが始まりそうな雰囲気だったが、アテナさんが説明してくれて無事収まった。


「そういうことだったのか。人間界でゲートの周りをウロチョロしていたら、中に引きずり込まれて、気を失っていたところを姫様に助けられ、そしたら魔族が襲ってきて、お返しに助けた…と」

赤髪男が改めてことの成り行きを整理した。

「なんか作り話みたいだな」

いまいち信用されてないのか、赤髪男が言った。

「いや、ほんとなんだって!」

俺は、必死に訴えた。

「まぁでも、姫様を救ってくれたことは事実だ。改めて礼を言う。ありがとう」

どこまで信用されているかわからないが、こうやって面と向かって感謝されると照れてしまう。


「それで、剣志くんはこの後どうするの?」

アテナさんが聞いてきた。

「うーん、そうだな。とりあえず人間界に戻る方法を探してみるよ」

「じゃあ、家に来る?お父さんならきっと戻る方法を知ってると思うから」

アテナさんが提案を聞いて、赤髪男は何か焦ったような表情になった。

「姫様!それはいけません。一般人を城に入れるのは!しかも、神族でもない人間を!」

「いいじゃん、それくらい。剣志くんは私の命の恩人なんだよ。お父様もきっと許してくれる」

「しかし、城の決まりでは!」

「ふーん、テセウスは私のお願いより城の決まりの方が大事なんだー」

アテネさんのツーンとした表情で見つめられて、赤髪男も困惑している様子だった。

「大丈夫だよ。お父様には私から事情を話すから」

「しかし…」

俺のことで話がまとまらないことに申し訳なく思い、俺は口を挟んだ。

「あのー、何か事情があるのなら大丈夫です!そこまでしてもらわなくても、自分で帰る方法を探してみます。ありがとうございます」

「あっ!ごめんね。気を遣わせちゃって!心配しないで。剣志くんは必ず私が人間界に返してあげるから」


それから数分後、ついに赤髪男が折れた。アテナさんの説得が成功したのだ。

「わかりました。俺からはもう何も言いません。姫様の好きにしてください」

「うん、ありがと」

アテナさんが俺の方に向きを変えた。

「じゃあ、行こっか!剣志くん」

「はい!」


人間界に戻るため俺は、アテナさんの家に向かうことになった。道中、俺は気になっていたことを質問してみた。

「そういえば、さっきから少し気になってたんだけど、姫様って、アテナさんお姫様なんですか?」

「うん、そうだよ」

あっさりと答えられた。そこに赤髪男が被せるように発言してきた。

「お前、そんなことも知らずに姫様と話していたのか。どおりで言葉遣いがなってないわけだ」

「そういえば、名前しか教えてなかったね。じゃあ改めて」

アテナさんと赤髪男は俺の前に立った。

「アテナです。神王の娘で、神界では姫をやっています」

「俺は、テセウス!神族部隊3番隊隊長をしている」

それを聞いただけでも驚きだが、もう一つ気になることがあった。

「え!!ってことは、アテナさんのお父さんって?」

「神王だよ」

「えーーーーーー!!!」

本日二度目の驚きに俺は声を上げずにはいられなかった。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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