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九十話 土地神と死神とダーリン


「南野雪花神!!?」


〝 おぉ!! 仇敵きゅうてきの魚泥棒の黒猫ではないか!!?

そんな一丁前に理を外れた姿をしおってからに このワシに張り合おうてかぁ?!! 〟


「前見ろ前!!」


重量など関係なく何発も両腕を振り落とす榊葉に 結界は持ちそうに無い

かといって避難できる場所もなく 立ち往生する二人と一匹に雪花神は提案を下す


〝 実は病み上がりでの まだまだ力が戻ってきておらん

そこでじゃ! ここはサクラとピロシキに任せての ワシはママンの処へ行って武器を取ってくる 〟


「いなくなるんですか?!!」


〝 結界はそう長くは持たない それまで可能な限り遠くまで逃げておくれ 〟


そう言い残して雪花神は規格外の遠い海の彼方へと飛んでいってしまった


「逃げろって言われても…… どうするカタ?」


「とりあえず反対の岸まで逃げるしか……」


二人を乗せて場所を離れるカタ

しかし谷下だけは黒い怪物から目を離さない


「まだ複数の魂の一部だった頃の微かな記憶で断片的にしか思い出せないけど

友達タイプと融合したソトースって神は 人類を根底から全て消すつもりよ

だからアイツからすれば この黄泉の国こそ本懐を遂げられる絶好の機会……」


谷下はカタの背中をおりて サクラとピロシキのもとへと戻った

慌ててカタと三木は引き返す 

息を切らして辿り着いた彼女は榊葉に向けて思いっきり息を吸い


「やめなさい!!!!」


〝 …………っ!!! 〟


怪物の表情からして谷下の声は届いていた

しかし体が言う事を聞いてる様子ではない

殴りかかることを止めない魔神相手に 谷下の口もまた閉じようとしない


「やめて!!!! やめて友達タイプ!!!! あの頃の優しいあなたは何処に行ってしまったの?!!!」


必死に語りかけるが 無意味だった

やがて結界は粉々に砕かれ 魔力が尽きる雪花神の分身だったサクラとピロシキは光となって消えてしまう


「あぁ…… っ……やめなさい!!」


〝 ゴロズ…… アイダガッタ…… ゴロズ…… ゴロズ!!!!

ゴギャッ…… ゴギャァァァァァァ!!!! 〟


最後の一振りで谷下も 後ろで身構える三木とカタも終わりを悟る

しかし頼もしいことに新たな助っ人が現れた


「待たせたな」


三叉戟さんさほこを魔神の頭に突き刺し 桃源郷の地に足を着けたのは


「夜桜さん!!」


「おっ三木か…… 大分体調が良くなったみたいだな」


夜桜の自宅で介抱して貰っていた三木は近づいてお礼を言う

しかし谷下の反応は三木とは違った

魂の姿は時として 人によって外見を変えさせている


「……キャリー?」


「会いたかったぜハニー」


夜桜月霞よざくらげっか

肉体は別でもその魂はかつての谷下の夫であるギア・キャリントンだった

そんなキャリーは開口一番で谷下に熱いキスを送る


「んなっ?!!」


三木は呆然とその光景を見つめ カタは爪をギラつかせている

察した谷下は一旦キャリーを振りほどいて説明した



「改めて紹介するね 私の旦那さんのキャリーです」



「私のお義兄さん……」


「俺の飼い主の伴侶…… だと……」


実際に遭遇しても未だ呑み込めない三木とカタ しかし状況はそうのんびりさせてくれない


〝 ゴギャァァァァァ!! 〟


頭を抑えて悶え苦しんでいる榊葉


「何なんだあいつは本当に……」


「あなたの分身よ」


「……ターミネート18?!!!」


「えぇ…… おそらく淋しい思いをさせてしまったんだと思う」


悲壮な声を上げる巨大な怪物を前に 他人事では無くなったという顔をしている二人

そんな二人の背後にいる三木の肩を誰かが叩いた


「えっ……?」


「こんにちは!!! 死神です!!!」


「あっ…… はい…… こんにちは……」


その存在に谷下とキャリーも気付く


「いやぁ大変な事態になっちゃいましたね!!」


「そう思うなら何とか出来ないのか? 死神って言えば世界共通の魂の管理者だろ?

この何億と集まる魂が消滅しようという状況下で他人事かよ?」


「私共も必死に対策本部を立ち上げて絶賛会議中なんですよ!!

あ…… ちなみに私ら死神は複数いるので 私の事は〝白井伊詩シライイシ〟とお呼び下さい!!」


「……んで? 死神が束になってもあのデカ物は退治不可能って事なのか? 白井さんよ」


「そ~~~ですね~~~~ 誠に申し上げにくいんですが あのモノには魂が無いんですよ~~」


全身真っ黒衣装の死神白井は 人の皮を模した顔のお面を外すと

手持ちのハンカチで白骨した頭蓋骨から滴る汗を拭っている

そして再度お面を付け直すと 遠くにある煉獄を思わせる火山口に指を差した


「あぁいう輩は本来ならばこちらの天国へ案内する前に己の禊ぎを自覚させ

業を背負って頂いて罪を火の海で洗い流してもらいたのですが

……あれどっからどう見ても人外ですよねぇ? 人外と人外が融合しちゃってるじゃないですかぁ

出来る限り調べましたが どういった御縁で機械と外なる存在がくっついちゃったんですかぁ??」


「それは俺達にも分からないんだ……」


キャリーもまた後ろめたい気持ちで白井の話に応じる


「機械の方は確かに俺も関わった…… だがソトースの方は全く規格外だ

どこで接点を設けていたのか…… 夜桜だった頃の記憶もあるが 調べようが無かった」


「それに比べてもう一人の方 名前はそちらの女性と同じクローンでしたっけ?

あちらは複数の魂が一つの肉体に入っておられたので 異例なだけで問題は解決しましたよ

見たところ谷下希さんの魂を残して桃源郷に出迎えられたとか…… まぁ危機的状況ですがね」



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