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六十六話 四日目 本気であって自爆は前提


〝 何でお前がここにいるんだ?!! 〟


「…………」


容赦なく撃ち殺す夜桜は

榊葉が動かなくなるまで撃鉄を弾いていた


「夜桜さん……」


黒波は引いていき 谷下達は大事を免れた

近づく三人に夜桜は肩を貸すかと思いきや 三人の身体を扉の向こうへと押しつける


「消防士がサイロを消火している!! 建物が崩れる前に脱出しろ!!」


「夜桜さんはどうするんですか?」


銃の装填をしている夜桜の眼力は榊葉を指し示している

谷下は彼の事を言うべきか迷ってる 今の榊葉は原型を留めていない醜い怪物と化しているのだから


「こいつは何だ……」


散り散りになった筈の肉片一つ一つに生命力が感じられ

一つの場所に再結合を始めている


「サイロから出たら 建物を破壊しろ 出口を塞ぐんだ」


「それじゃぁ夜桜さんが!!」


「早く行け!!」


遊底スライドを鳴らす夜桜の指差す方へと真っ直ぐに走り出すしかなかった

狭い通路を二人担いで駆け上がる谷下は振り向く暇も無く


〝 ヨォォォォザァァァクゥゥゥゥラ~~~ 〟 


「……マジで誰だよアンタ」


有るだけの爆薬で入り口を塞いだ夜桜は

その場所を突き破られないように少し移動する

片膝が形成され 立て直す榊葉の表情は見るにも絶えないグロテスクなものに

襲い掛かってくるものなら尚更恐怖が増すだろう にも関わらず夜桜の銃口にはブレが無い


〝 ゴギャァァァァアアアアア!!!! 〟


「………」


かかとに力を入れて宙を舞う

一瞬の内に背後を取られた榊葉だったが そもそもこいつは既に人間では無い

神業とも言える夜桜の機動力など恐るるに足らない彼は

背中より垂れ流れる黒い液体を凝結した無数の針を 空中で避けようのない夜桜目掛けて乱射した


〝 ……早く追わねぇと せっかくの努力が奈落の泡沫に変わってしまう 〟


「……何でだろうな」


〝 !!? 〟


即死の可能性は高いと感覚で判っていた だが彼はまだ生きる


〝 前々から確認を取っておくべきだった お前は人間か?? 〟


「柄でもねぇ…… 何で関わりの薄い奴等にこんな必死なんだ俺は……」


〝 痛みを感じるならそうはなってねぇ…… ましてや身体中に針千本飲ませて立ち上がれる訳が…… 〟


「…………谷下先生」


〝 ??? 〟 


「お前の針から想いの記憶が流れて来た…… お前は外なる存在って奴か……

俺がいるのに俺の知らない記憶が見えた とある女性の事を谷下先生と俺は呼んでいた」


〝 ………… 〟


「そして…… 助けなきゃいけねぇんだな……」


弱々しい手付きで銃を構え直す

両目にも針が刺さり視界が悪い中でも標的を見逃さない


〝 何なんだお前は…… 何なんだお前は!? 何なんだお前は!!? 何なんだお前はぁぁぁ!!!!? 〟


「……俺を知りたきゃあの世まで追いかけてくるんだな こころで語ってやるぜ」


全ての弾を黒い液体に埋め込み

その刃で五体を引き裂かれる夜桜がその口を開くことは無かった


〝 殺しておかなければ ……そう判断せざるを要するまでの人間がいたとは意外だ 〟


故に研究所内は静寂

彼の存在を大きく知らしめる空気が榊葉の液体に沁みる

されど故に このままでは終わらない事を案じている事に彼は気付かない


〝 !!!!? 〟


夜桜の肉塊の隅から現れたのはC4爆薬だった

それも火薬の量は夜桜が隠し持っていたであろう全て

それがタイマーで起爆する瞬間は 研究所を爆炎で包む規模である




ーー染やんと最後の酒は呑めた ツムツムに伝言も遺しておいたしな

されど悔いは有り!! されど仕方無し!!!




一方その頃

谷下達三人はサイロの地下室を抜けて外に避難していた

それと同時に地下から噴き上がる爆風が全てを悟らせる


「夜桜さん!!」


建物は崩壊し 地下の通路に繋がる入り口は下敷きとなる


「…………動機が曖昧だけど いつもあなたは私を助けてくれた」


涙を拭く谷下は 急いで目の前の緊急を要するアカリヤミに目を向ける


「谷下…… 先生……」


意識が遠退とおのく寸前に目を開く事が出来たアカリヤミは谷下をジッと見つめる


「谷下先生…… そうだ貴女は谷下先生だ

僕は間違っていなかった 貴女は皆から慕われる女神……」


「口を閉じて!! 必ず助かるから!!」


「……そうですね 思い出を作るのはこれからですよね」


握った手は残酷にも地に落ち アカリヤミはそのまま息を引き取る

隣にえりちゃんをそっと寝かせる谷下は人知れず泣いていた その時


〝 何とも遺憾いかんな事態が続いておるのぉ…… 〟


「南野雪花神様?!!」


姿は見えないが微かに聞き取れるテレパシーを受け取った


〝 アカリヤミこやつはおそらく榊葉…… 正確にはソトースの黒い液体に触れたのだろう 〟


「ソトースの?」


〝 外なる存在じゃからのぅ お主が見てきた世界もまた 奴にとっては把握出来るのじゃよ 〟


「ぅ…… うぅぅ…… うぅぅぁぁぁぁぁ!!!!

何なのよソトースって…… バッカじゃないの!!!!」


〝 ……馬鹿も含めた〝一にして全なる存在〟じゃ 〟


「なんでそんなすごい神様がいるのに私達をおとしめる訳?!!

というよりも千年前の厄災も彼なら止められたよね?!!!

雪花神様ですら少数の命を救ったんだから可能だよね?!!!!」


〝 そこはワシも引っかかっておった 〟


「……というと?」


〝 ワシもお主も見た榊葉と合体した存在は邪悪に満ちていた……

ワシら神々も恐れを抱く存在が あの様に偏った稚拙を並べるまでに落ちぶれるとは考えにくい

〝何か〟が抜け落ちたという言い方は適切かどうかは今の段階では調べようがないがの 〟



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[気になる点] 夜桜さんばっかりかっこよくてなんかズルいと思う|ω・`)チラ
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