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五十五話 二日目 お魚くわえた黒猫 追っかけて 裸足で千年 執拗な神様♪


〝 紅葉の御手手アカミナカヅチ!!!! 〟


「 千年肉球拳ユキドケオニャンコポン!!!! 」


二つのそこまで規模も大きくもない大技が衝突した

谷下も思わず神と妖怪の争いにしては些か期待外れというお気持ちだ


「なんて愛くるしい闘いなの…… なんて言ってる場合じゃなかった!!

二人とも… じゃなくて一柱と一匹は落ち着いて下さい!!」


〝 邪魔をするでないと言ったじゃろ!! 〟


まだ闘いを止めない神に痺れを切らした谷下は間を割いて説得を試みる


「千年前の魚なんてもう無いんでしょ? 過ぎた事はもう忘れましょうよ!」


〝 一匹二匹の話ではない!! ワシに捧げられたお供え物を此奴は…… 此奴は!!〟


「猫なんだから仕方無いじゃないですか!! 神様がその程度で小さい命を摘み取るんですか!!?」


〝 殺しはせん!! ……じゃがそれ相応の罰をじゃな 〟


「……殺す気は無いんですか?」


さすがに谷下の背後で体を舐め回しているカタを見て毒気を抜かれたのか

雪花神は独特の構えを崩して敵意を沈めた


〝 ……ワシはあの黒猫を〝殺した〟のか? 〟


「ッ…… 順応が早い所はさすが神ですね あなたと言うよりはえりちゃんを疑っていたんですがね」


〝 なるほど…… それを聞けて良かった 〟


雪花神は胸に手を当てると身に宿る別の何かに対して強く念じ始めた

幼い肉体とはかけ離れた 強く輝く光彩は内に宿る何かを抑えつけるかのように圧縮する


〝 フゥ…… 思っていたより強くなっていたな…… 〟


「もしかして例のソトースですか?」


〝 それも悪い方じゃな…… 表に出てもワシの力で封じ込める事も可能じゃったが

そこの黒猫を瞬殺することなど他愛も無かったであろう 〟


「一日目と三日目に私が死ぬ可能性ってこういう事なのね」


〝 三日目にアカリヤミを殺す場面もそういうことなのじゃろうな…… 全てを察した 〟


雪花神はカタを指すなり 煮え切らない顔で宣言する


〝 お主との決着は見送りにする…… 精々罪を改めるんじゃな…… 〟


すると身体は千鳥足でフラフラと立っていることが出来なくなり

雪花神の目は虚ろとなってそのまま地面に倒れてしまった


「ちょっ……!! 寝てるの?」


「……ママ」


寝言で完全にえりちゃんに戻っていると判断した谷下は少女を抱きかかえアパートに帰ろうとしていた


「カタもお出でよ! 私の部屋で良ければ暮らしていいよ!」


「俺を思い出したのか?!!」


「それは無理かもね…… あなたは私の飼い猫なんでしょ?」


「ッ……」


「人違いかもしれないけど あなたが満足するなら アペルト荘で待ってるから」


そう言い残して谷下はアパートに帰っていった

一匹土管の上で毛繕いをするカタは何かをするわけでもなく

されど何処か泣きそうな そんな瞳を暗闇の中で光らせていた


部屋にえりちゃんを寝かし終えた谷下はアカリヤミと合流する


「私の正体って何だろうね……」


「……」


台所に座って互いが見つめ合う静かな空間で

幾度も水を体内に取り入れるアカリヤミが覚悟を決めて言う


「貴女は〝複数の魂〟をその身体に宿し それでも尚一つの人格を確執させて生きている

……素直に所感を述べるなら〝人ならざるもの〟とでも言いましょうかね」


「やっぱりそうなんだ…… 私ってガイロイドに見える?」


「一見は普通の人間です だけど私みたいに霊感の強い者には分かるんです

内側に存在する…… パッと見ただけで五十万人以上は居座っていますね」


「そんなに入っていて私の身体はパンクしないの?」


胸を逆撫でする谷下にアカリヤミは平然と応える


「魂は実態を持たないですから総量に上限などは無いと思います

ただ不思議に思っているのは巣くう魂達が何故にその肉体から出ていかないのかですね」


「う~~ん よく分かってないけど何でだろうね?」


「本来肉体と魂は元からの状態で一致すべきが天則なんですよ

谷下様の肉体はその…… クローンなんですよね……

十八年間も生きていれば空になっていても おかしくないと思うんですよね」


「ウ~~~~ン…… 今ここでは答えの見つかりようが無い謎ですな……

それはそうと別の疑問なんですけど なんでさっきから様付けになってるの?」


「もしかしたら彷徨える不幸な魂を聖母のように包み込む慈愛の女神様かなと思いまして?」


「ヤダァ! アカリヤミさんったら~~ 私が女神なんて過大評価し過ぎ~~!!」


「……人間らしいですね」


「ヘッ?」


「内気で引っ込み思案の僕と比べれば 笑って悲しんで真剣になって

表情豊かな貴女様は本当に滅亡後の世界を先導するに相応しい

まさに〝文明の非常電源〟なのかもしれませんね」


席を立つアカリヤミは一礼して自室に戻ろうとする


「それでは寝ますので先に失礼します」


「うん! お休みぃ!」


一人で考えている谷下は特にこれからの事について計画を立てるつもりもなく

ふとした時間が過ぎる頃には自分の部屋に戻って眠りに就いていた



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