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五十四話 一日目 因縁の対決!! 南野雪花神VS黒猫のカタ


〝 他に質問はあるかの? 〟


「アカリヤミさんの部屋にあった偶像は?」


〝 あれは蛇夢ノ像ガラクタじゃぞ?

……彷徨う魂を一時的に浄化するまで閉じ込めておくお祓い道具として使われておったがな

確認してみれば中身は空っぽ 何年も前に全ての霊魂が跡形も無く消えておったのじゃ 〟


「何でアカリヤミさんが持ってたんですか?」


〝 それは…… 〟


雪花神が口を開こうとする瞬間にアカリヤミが自分で話し始める


「それは僕が護身用に貰ったものなんです

元々霊感が強いせいか 大家さんに拾われてこのアパートに住み込んだ時に

何故だか毎夜毎夜 肌が冷え込み 金縛りが頻繁に起きました

微かに聞こえるラップ音で安らかに眠ることは叶わず 誰かに見られているのに辺りの静けさが逆に恐怖を増して……」


「ぅ……」


谷下が体勢を傾けて雪花神の背後の窓に浮いている死人と目を合わせた

彼は目を逸らしながらも片手でVサインをかましている


「それで大家さんに相談しても真に受けて貰えず……」


「あぁ分かる~」


「牡丹卍の神主さんに相談しに行ったのです」


「夜桜さんに?!」


「はい…… セミオートライフルを向けられながらも話を聞いてくれて

そして渡されたのがこの偶像です 決められたお経を読むことで彷徨う幽霊を封じ込められると

半ばやる気の無い説明でしたけど今はそれにすがるしかないと持ち帰ってきたのです」


「まぁあの人は神職に全然興味無いのに神主やってるからね……

ん? てことはこの像って元々夜桜さん家にあったってことだよね?」


谷下は考えてみた

元研究員の子孫にあたる夜桜さんの家にあった偶像

もしも首無しの市松人形や資料と一緒に眠っていたのなら


「この像も…… 私に関係あるのかな?」


〝 ……お主は先程 自分は同じ時間をループしてると言っておったな? 〟


「はい」


〝 どこまで己を掌握しておる? 〟


「……自分が人間じゃないって所までですかね?」


谷下の言葉にアカリヤミは呆然と見つめていた


〝 そうか…… えらいこっちゃな…… 〟


「私について何か知っているんですか?」


〝 聞きなされ娘よ お主の正体は………… 〟



「ご飯だよぉ!!!!」



ドアをノックもせずに開けてズカズカ入って来たのは大家だった

ここで初めて日が暮れている事に三人は呆気にとられる


「ほらえりちゃん!! アカリヤミちゃん!! さっさと台所に行ってお皿並べておくれなぁ!!

それにのぞっちゃんもぉ!! せっかく歓迎会するんだから早よ行って席に座る!!」


「「 は…… はいぃ!! 」」



「えりちゃんもお腹空いたぁ!!」



いつの間にか普段のえりちゃんに戻っている姿に驚く谷下

食卓では南野雪花神は寝ているのだろうかと 箸を甘噛みしながら模索する彼女に大家は

はしたないと説教混じりに酒を放り投げられていた


「神様は寝てるの? アカリヤミさん」


「あの方だって休息は取りますからね ノジャノジャ言って来ない内は何言っても反応はありません」


「……ホントに一番の信仰心を抱いているの君?」


皿洗いが終われば部屋で寝る準備をしている

風呂に入ろうと洗面所に向かう谷下の反対側よりバスルームから死人が現れた


「どしたの?」


〝 ……今日は夜更けまで起きてたらどうだ? 〟


「えぇ~~ 眠いんだけど?」


〝 気付かないか? 〟


「何をです?」


〝 今回の貴女は〝泥酔〟してませんぞ? 〟


「…………ォア!!!」


〝 そして明朝には何が起きる? 〟


「〝カタが殺されてる〟」


〝 ……助けてやってもよろしいのでは? 〟


「……」


この晩 谷下は寝なかった

毎度毎度理由も分からず横たわるカタを助けられるかもしれない

しかし前回であの黒猫が四日目まで生きていた事に疑問符を頭に乗せている谷下は

どちらにせよ眠れないでいた



ーー私がすぐにアパートから離れた未来ではカタは死ななかった 何故?



〝 ずっと待ってたのに…… あんまりじゃねぇかよ 〟



ーーそうだ…… カタは私の事を知っていた 待ってたんだ



〝 ……何であんなに可愛がってくれた飼い猫を覚えてねぇんだよ 〟



ーー猫を飼った覚えは無い…… ん~~~何なんだ!!



布団でうつ伏せになりながら腹をよじらせているが答えは見つからない

そんなこんなで日が変わろうとしている真夜中に 爆睡状態ではけして気付くことが無かった猫の鳴き声が耳に入る


「えっ!? 今!?」


隣の畳で添い寝してた死人は軽く頷く

パジャマ姿も気に留めることなく 谷下は懐中電灯を持って外に出た


「声は何処からだろう……」


耳を澄ますとその場所に覚えしかない空き地へと彼女は向かった


「カタ!?」


「来るな!!」


そこには重ねられた土管の上で臨戦態勢のカタと

それを見上げるえりちゃんが膠着こうちゃく状態で睨み合っていた


「えりちゃん…… じゃないよね?」


〝 小娘か…… 今は邪魔するでない!! 〟


「なんで…… なんでカタといがみ合ってるんですか?!」


〝 ……譲れねぇ聖戦がワシと此奴にあるからじゃよ 〟


「せ…… 聖戦!!?」


先に動きを見せたのは雪花神の方だった

それに迎え撃つかのようにカタも本来の姿へと変貌を遂げる


〝 フン…… 正体を現わしよったな〝魚泥棒〟!!

千年間ワシから逃げ続けた罪は黄泉の国の戒め以上に重い呪いを課せたるわぁ!! 〟


「神が魚一匹でねちっこいんだよ!! お前は何か? 魚肉の神か? 魚肉ソーセージを司るだけの神様ですかぁ?!」


〝 貴様ワシを愚弄するとは天罰をご所望かぁ?!!

ワシから〝肉〟を奪取するということの意をそのモフモフボディーに自ら叩き込んでやるわぁ!!〟


「上等だゴラァ!! 散々しゃぶった挙げ句に腹に収めて 近所の肥溜めに吐き戻してやるわぁ!!」



今ここに 神と猫の仁義なき闘いの幕が開いた



「……下らないって言っても良いですか?」




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