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四十四話 三日目 フィクサーチェーン


不意に榊葉の手を握ってみる

真相は闇の中に追いやられたが もしもシロなら榊葉はただの被害者なのだから


「ゲホッ…… ヴェホォ……!!!」


「っ!!? 榊葉町長?!」


辛うじて意識が残っていた榊葉 されどもう虫の息だ


「あなたは…… あなたは誰なんですか?! 過去から来たんですか?」


「ハァハァ…… 俺は……」


「本当にあなたがサリンを撒いたんですか?!! 教団の施設に火を放ったんですか?!!」


「俺は…… 俺は……?」


「死人さんを殺したのもあなたなんですか?!! なんであなたは獅子や花火の事を知っていたんですかぁ?!!

…………ちゃんと話して下さい!!!!」


胸ぐらを掴む谷下 しかし榊葉はずっと空を見ている

意識が遠くなる上で唯一口にしたことは



「俺は…… 〝榊葉直哉〟って…… 誰なんですか?」



榊葉は最後にそう言い残し 静かに目を閉じた


「ハァ? ……ふ ふざけるなぁ!!!!」


谷下はそのまま上体を起こして不満をぶちまける

当の榊葉は既に息も無い骸となっていた


「起きろ榊葉ァァアアアアア!!!! ……全てを話してよぉ!!!!」


握った両手を交互に振って訴えかけるが結果は虚しい

それ所か一発の銃声で状況が一変する


「大人しくしろぉてめぇらぁ!!!」


「ハァハァ…… ツムツム!」


刑事のツムツムが数人の警察官を連れてやって来たのだ


「あん時の顔触れだなぁ…… こんな所で何を……」


ツムツムの視界に入ったのは死体となっていた榊葉だった


「おいおいおいおい…… やってくれるじゃねぇか…… 結局殺人沙汰にしちまいやがって……」


「「「 っ……!! 」」」


「おぉい!! 全員しょっぴけ!! 何が起きたかウニやイガグリ投げてでも俺が白状させてやる!!!」


ジリジリと近づいてくる警官達

カタは猫なのでノータッチだったが 狙われている三人の内のミカンとティキシは逃走の意を示していた


「切り抜けますよお嬢様!! さぁ私に抱かれて……」


「私は逃げない」


「なんと?!! ですが今は高確率で不利でっせ?」


「見て!!」


谷下が指さした遠くの方には夜桜がいた


「あの人は私を守ってくれた…… 今は裏切れない」


「ですが……」


「私なら大丈夫…… 別に取って食おうって訳じゃないでしょ」


「そうですか…… ではご武運を…… さぁ行きますよ人殺し!!」


ミカンとティキシは相手の目を引きつけながらも全速力でその場から逃げ出した

谷下は然程二人に対して心配していなかったが それよりも屋根に登っているカタが気になった


「カタ……」


「…………」


黒猫は屋根から谷下をジッと見つめていたが 特に何かする訳でもなく ただただ凝視


ーーあなたは何なの? 何の目的があって榊葉を殺したの?


「おらぁ!! さっさと来いや!!」


ツムツムに手錠ワッパを掛けられ 谷下は署へと連行された

一匹残されたカタはその場に横になって座り 深い溜息と共に顎を屋根にくっつける


「……時間は経ち過ぎたが 〝飼い猫〟を忘れるかね普通」


寝そべるカタが熟睡を迎える頃には サイレン音と共に救急車がやって来た

日は完全に海の彼方へと消えて 谷下が取調室に連れて行かれる頃には見ることの出来ないオーロラで空は輝く


「さて…… 篠崎塔子さん いや谷下希さん!

あなたはあそこで遺体の胸ぐらを掴んで一体何をしていたんですか?」


「…………」


「例の二人ともご一緒だったようで…… この街の町長を死に追いやって…… しかもこのクソ忙しい時に」


「…………」


「黙秘ですか?」


「その権利はある筈です」


「ハッハッハッハ!!」


ツムツムは立ち上がるなり机を思いっきり手のひらで叩く


「どこまで警察ナメりゃぁ気が済むんだ あぁ!!!?

黙ってりゃ逃げられるとでも思ってんのかぁ?!

サルじゃあるめぇし知らぬ存ぜぬじゃ済ませねぇぞゴラァ!!!!」


「っ……」


既に心臓が口から飛び出ても可笑しくない恐喝に震える谷下だったが

この際一秒でも早くここから出る為に ありのままを話してみる


「明日の夕刻に…… この島を覆う程の土煙が波のように迫ってきます

私は太陽フレアだと踏み 太陽嵐や磁器嵐なんかではきかない熱風が島を覆い 皆が死ぬんです」


「………」


「不作不漁の原因から生まれた仮説

昔からすれば常に夕焼け空とオーロラという異常気象による温暖化からの警告

サリンで多大な被害が出ていますが…… 明日には人類滅亡が待っているんです

私はヒントになるかもしれないカイコ真理教へと赴き 実態を把握

信者の中には過激な連中がいたかもしれませんが 尊師アイリーンさんが掲げていた理念は人を救い

明日の事も預言していた彼女はあの施設をあくまで憩いの場として……」


「もういい……」


「そんな健全な組織を地獄に突き落としたのが榊葉直哉だったのです!! 目撃者もいます!!

お願いします!! 今日は帰して下さい!!」


「今日は隣の留置所で寝泊まりして貰う

明日になったらマインドコントロール専門の心理学の協力者を呼んでやるから……

一晩自分の考え方を改めてみるんだな」


ツムツムは部下に指示を下し 谷下を留置所へと収監させた

その頃ツムツムは署内の黒電話を使ってある場所に電話を掛ける


「もしもし…… そっちはどうだ?」


『家や神社はほぼ全壊だが…… 〝資料〟はなんとか無事だった』


「そうか…… それにしてもあの谷下って娘 明日には人類が滅亡するなんてデタラメをカマしてきやがった」


『……そうか そいつはヤベェな』


「あぁイカれてやがる…… どんな洗脳されたのか想像するだけで身の毛がよだつな!!」


『とりあえず俺も明日そっちに合流する 取調室に入れんだよな?』


「あぁちゃんと許可を貰ってる 指定の時間に遅れんなよ夜桜」


『あぁ……』


受話器を戻すなり 夜桜はとある調べ物を漁り始めていた



ーー滅亡か…… コロナの線が消えたとなればやっぱり…… これは腹を括らねぇといけねぇかもな




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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと、やっとちゃんとまとも(?)な行動を……(´;ω;`)
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