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二十四話 一日目 領域外の美少女


ーーこれが夢じゃないならば最悪だ

咳が止まらない 熱も上がっている 繋がれていたチューブも途中から切断され

何処かも知らない町並みの裏路地に放り投げられている


病衣姿の少女はフラフラと壁伝いに光が地に差し込む場所へと必死に歩く


「助け…… 助けて……」


呼吸を整えられず咳の頻度が加速する一方


「誰か……」


発熱による汗が衣類を濡らし

立っているのも限界の彼女は地ベタを這いずる


「どうしたの?」


通りかかった通行人を見て彼女は拒んだ


「ダメ…… 近づかないで!!」


「今さ 助けてって言わなかった?」


身体が弱っているせいか言葉が支離滅裂になっているのだろうと判断した通行人は

倒れている少女を背負い 学校へと猛ダッシュして行った


この場所は羨門街の隣町

学校に図書館 文房具店から展望台までと

この島唯一の学校に通う学生の為だけに用意されたと言っても良いような場所で成り立つ

通称〝勉学の町〟 【子々孫村ししそんそん


バス停に降りた谷下はまさか一日も経たない内に〝地元〟に帰ってくるとは思いもしなかった


「さてと…… 喫茶図書館にあの人いるかなぁ……

よっぽどの用事が起きない限り動かない人だから おそらく居ると思うけど」


羨門街とは打って変わって知り馴れた道を平気で歩く谷下

実家に寄ろうとも考えたが 緊急事態な上に半日でホームシックはナンセンスとの判断で後回し

蔦で覆われた年季の入った図書館の前に到着した谷下は入り口付近の窓から中を覗く


「いるかなぁ あっ!」


いつも居そうな場所にいつも通り座っている女性を見かけては

中へ入るなり大声で駆け寄った


「〝夕貴ユキ〟姉さぁ~~ん!!!!」


「図書館ではお静かに…… ってのぞっちゃん!!? 久し振り~~!!!」


大声を大声で返す当図書館の管理人夕貴

谷下とは学校で先輩と後輩の関係を持つ旧知の仲だ


「……あれ? そういえばのぞっちゃん 羨門街に行ったんじゃなかったっけ? 忘れ物?」


「それがですね……」


谷下は自分の身に起きた全てを包み隠さずありのままに伝えた


「……小説でも書こうとしてるの? のぞっちゃんの背景描写は読んでて綺麗だから~」


「違うんです実体験なんです!!」


「のぞっちゃんの妄想力は肥大だったからね~ 学生時代は退屈しなかったよ~」


「……やっぱり信じてくれませんか?」


「信じるよ!! その小説を書くためにお姉ちゃんの知識をお借りしたいって事だよね!!」


「ハハハ……」


とりあえず否定されるよりかはマシだと自分に言い聞かせる谷下

夕貴は本棚から必要な本だけ取り出して机に並べだした


「あの…… 仕事中なんですよね?」


「大丈夫大丈夫! 学生さんは休日以外は放課後にしか来ないから

今は人が()いてるし 本を盗んでいく人もいないしね」


「……そうなんだ こういう仕事って儲かってるの?」


「学校との提携で学生対象のレンタル料は安くしてるけど

私が複製している本は高く売れてるから心配しなくていいよ」


世間話を交えつつも目はしっかりと本を読んでいる強者だった

谷下が数少ない中で学生時代から尊敬している 通り名にもなった〝無駄話をしつつ本の内容を把握する文学JK〟


「まずはその人類滅亡のミソとなる紅い空だね

海が枯渇するかの様な土煙が視野全体から襲ってきて~だっけ?」


「そうです…… 陽が沈んだと思ったらいきなり明るくなるのがもうトラウマで……」


「太陽が沈んだ場所から押し寄せてくるか…… 出てくるので言えば〝太陽フレア〟かな?」


「太陽フレア?!」


「そう太陽面爆発 活発な時期によく大きな物が見られて…… 私は発情期と呼んでいるわ!!」


「今は下ネタ控えてください……」


「大きいと言ってもこの星には届かない程度の爆風なんだけどね

スーパーフレアでさえ 人類は危惧したかと思うんだけど存亡の危機までには至らなかった

X線やプラズマの影響で通信障害や所々にオーロラが見れるようになる点では

地球温暖化のテーマではよくフレアが出てきたらしいね」


「オーロラ?!」


「そう! だから太陽フレアを題材にした小説は中々良い線いってると思うよ」


「いやいや…… もういい加減信じてくれません?! 三日後に滅亡するに足りる証拠が揃ってるよね?!」


「えぇ~~ のぞっちゃんも〝カイコ真理教〟みたいなこと言うんだね~~」


「……なんでここでカイコ真理教が出てくるのよ」


谷下はその名前を聞いてゾクッとする


「私達が学生の頃にも話題なったじゃん! イカれたOGの卒業論文 タイトルは〝預言の書〟

今でも学校の生徒さん達が面白可笑しくネタにしてるんだよ?」


「その卒業生達がカイコ真理教を起ち上げた……」


以前 谷下が高山から聞いたことと話が合っていた

信憑性が高いからこそ尚更恐怖が襲ってくる


「ねぇ…… 今からその学校に行ってみない?」


「仕事あるから今は無理だよぉ…… あっ じゃぁ知り合いの生徒さんに連絡しておくよ」


夕貴はフロントのメモ紙を一枚切り抜いて筆を走らせると谷下に渡した


「……千代子チヨコって読むのかしら? 学生さんなの?」


「そそ! ウチの常連さんなんだぁ 文豪に興味あるらしくてね」


「わかった行ってみるよ ありがとう夕貴姉さん!!」


「あまりオカルトにハマりすぎるなよ~~」


「違いますって!!」


谷下は夕貴に茶化されながらも前進するヒントがあるかもしれない学校へと向かった




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― 新着の感想 ―
[一言] 次回JK登場か!? 楽しみー!
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